文字のない愛を。-2- (ページ38)

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目下には蹲み込んでいる聡の背中

明らか私に対してなのに、突然の状況にあたふたしてしまう。

聡「乗って」

「いやでも…」

聡「いいから乗れ」

ちょっと低めの声で言われるとビビって仕方なく彼の肩に手を添えて乗っかろうとする。

すると、後ろからリュックを抜き取られ振り向けば慎太郎くんが私のやつを左肩に掛けていて。

慎「持ってるから」

「あ、ありがとう」

慎「聡、しんどかったら途中で交代するから」

聡「いい。大丈夫」

両膝裏を抱えてくれている彼の手は昔見た可愛いらしいものではなく、男らしくしっかりとしたもの

聡「てか、凄いよね」

「えっ？」

聡「何かあったらおんぶするってやつ。

実現しちゃったなって思ってさ」

「…ごめん。重いでしょ」

聡「男、舐めないでくれる？(笑)」

そうは言いながらもやっぱり申し訳ないので、

私は掴んでいる手を申し訳なさ程度に緩めた。

・

慎「あれー、これどっちだっけ」

目的地まであともう少しだという所に現れた二つの分かれ道

記憶上は右から来たような気がするけど…

それは曖昧な答えにすぎなくて。

石「地図は？」

慎「…右だわ！」

地図のアプリを見た慎太郎くんが右の道路を指差して歩いていく。

下でよいしょっ、と言った聡が私の体を持ち直す。

暑さもあるおかげで彼の額からは大量の汗が流れ、隣にいた心音が彼のタオルでそっと拭ってくれる。

聡「ありがと」

石「あと１０分だけど、先生に連絡する？」

慎「余裕でしょ！地図も５分ってあるし」

…と言って進んでいくけど、午前中に見た景色とはまるで違っていて。

全員の空気もあまり良くない

さっきまで余裕そうだった慎太郎くんはどこか不安げで。

聡が彼のスマホに顔を寄せると明らか険しい顔で「逆だ」と言った。

慎「マジ…」

聡「これさっきの道まで戻んないと無理かも」

石「どれくらいかかる？」

聡「軽く３０分は…」

慎「みんな、ごめん！！」

聡「俺らもちゃんと確認しなかったから」

完全に遅刻と決まった私たちの脳内に大きな焦りが押し寄せて来た。

今まで暑いからとかいていた汗さえも冷や汗のように感じる。

急ごう、とみんな急ぎ足で来た道を戻っていく。

不安と焦りで膝裏を抱えている彼の手がさっきより強くなった気がして、私も彼の肩に添えていた手を少し強めた。