文字のない愛を。-2- (ページ37)

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石「ふふ、聡くんのこと考えてた？」

一眼レフを持っている心音が隣で肩をつついてくる。

別れた

……とは言えなくて。

というか言いづらいくて。

いつかは話さないと、とは思っているけど話題に出すタイミングが無くて先延ばし状態

だから、今もバレないように嘘をつく。

石「聡くんが彼氏って絶対正解だよね。

あんな優しい人、他にいないもん」

「そうだね…」

石「相談なら乗るからね？」

「うん、ありがとう」

罪悪感を抱きながら微笑むと、見て見てっ！とカメラで撮った写真を見せてくれる

写真の中に写っている聡の笑顔に胸の奥がきゅっと締め付けられた。

慎「おーいー、ずぶ濡れ～、押しすぎなんだよ！」

聡「そっちが巻き込んだんだろ！」

離れたところで戯れあっている男共は膝上まで折りまくったズボンの裾が少し濡れている。

ハートより海に夢中って。

提案した張本人が一番はしゃいでるよ。

石「男子だねぇ～」

「ほんと」
　

石「あっ、そろそろ行かなきゃじゃない？」

手元の時計を見てみると時間まであと４０分くらい

ちょっと歩くけど時間までには着く。

心音が聡と慎太郎くんを呼びかけると、彼らは未だ戯れ合いながらこちらに駆けて来た。

・

まただ…

一人だけ先に道路へ上がっていくと、太陽の日差しと相まって軽い目眩が襲う。

「…っ、あっ」

ビュンッ______

同時に、想像以上にスピードを出す原付に危うくぶつかりそうになる。

何とか避けたものの目眩のせいもあり、体はバランスを崩し、コケてしまった。

聡「Aっ！！！」

後ろで大きく叫んだ声が耳に届くと、大丈夫かと両脇に手を入れて立ち上がらせてくれる。

その時、左足首に激痛が走って

思わず右足に重心を置いてしまう。

「いった…」

石「もしかして捻った？」

慎「あの原付…マジで危なかったもんな

ふざけんなよ！！」

「出過ぎてた私が悪いから」

聡「歩ける？」

「うん」

後は戻るだけだというのに

こんな所で迷惑をかけるわけにはいかない

そう思って頷いたは良いものの、歩く様は普通とは思えないくらい左脚を引き摺っていて。

それを見た聡は咄嗟にリュックを慎太郎くんに持って、と渡すと道路に蹲み込んだ。