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聡「じゃあ、また」
「また来るね」
返って来ないと分かってても自然と出てくるこの言葉はもう人間の性のようなものなのだろうか。
もう何回目なのかもよく覚えていないこの場所は私が子どもで居られる唯一の場所
聡「持つよ」
「ありがと」
立ち上がった私は空っぽになった手桶と柄杓を
またちょっと日焼けした腕を伸ばしている彼に渡す。
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聡「今年は人少ないね」
「まだ最初の方だからじゃない？
お盆って中日とかに集中するイメージなんだけど」
聡「えー、そうかな」
中２の頃までは叔父さん夫婦と来てたのに、急に聡も行くって言い出してから去年からは聡と二人だけ。
叔母さんが、もう高校生だし同年代の方が話しやすいでしょって気を遣ってくれたのだ。
今じゃそれがちょっと気まずさを増幅させているような感じもするけど。
聡「あー腹減ったぁ、叔父さん家行くんだよね」
「うん。でもお土産買ってないから、先に買ってく」
聡「叔母さん、ご飯作るとか言ってた？」
「言ってないけど、多分作ってると思う。
去年も作ってくれてたし」
聡「Aが我慢出来ないから外で食べたのに、叔母さん家行ったらご飯があったっていうね」
「え、聡が外で食べようって言ったんじゃん！」
聡「責任転嫁は良くないですよ〜」
「急に難しい言葉使わなくていいから」
でも何てことない会話をしていると、変な気まずさもその時だけは消える感覚がする。
あはは、って思い切り笑ってる聡がいるから、この空気感だからってのが大きいんだけど。
だからこそ、ずっと頭の中で抱えるこのモヤモヤを彼にぶつけてみる。
「あのさ、聡」
聡「んー？」
「サッカー部って恋愛禁止なんでしょ？」
聡「あー、…それね、ただの噂だって。
なんか毎年そーゆーのあるらしいけど、先輩たちが信用すんなーってさ」
耳たぶを触るのは幼い頃から染み付いている彼の癖で、彼が嘘をつく証拠
私はそれを見て彼がつくくだらない嘘を笑っていた。
噂じゃない。
あいつに言われた聡ならきっと私がこんなことを聞いてくるなんて知らないわけないはず。
だから仕方なく出した名前はどこか怒り染みたように感じた。
「中島に言われたの。付き合うなって」
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作者名：ぶぶ | 作成日時：2020年11月14日 5時
