文字のない愛を。-2- (ページ11)

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まだ残ってる補習の回数に嫌気が差し、机に突っ伏していると前からコツコツと革靴が鳴る音が響く

健「みんな帰ったよ」

一番聞きたくない声が耳を通る。

何も反応したくなくて無視を貫く。

健「ちょっと渡してほしいもんあるから準備室来てくれる？」

渡してほしいもんって何よ。
　

それ、私である必要ある？

絶対嫌なんですけど。
無視して帰ろう。

顔を合わせないよう、俯いたまま荷物をカバンに入れて教室を出ていこうとした。

ガシッ

健「はい、捕まえた」

まぁ、そんな簡単にいくわけもなく。

私の左腕があっさりとアイツの細長い手に捕まる。

「セクハラで訴えますよ」

健「話したと思ったらそんなこと言うわけ？

相変わらず愛想のないお子ちゃまだなぁ」

「えっ、ちょ！！」

自分でも何が起きてるのかよく分からない。

ただ、地についていた足が動いているのは確か。

少し遅れて分かったことはアイツに手を引かれて歩いているということだった。

え、なんで？！？！

何も言わずに連れ出すってどういう教師！？

離せ、の意味を込めて止まってみたり、彼の手とか腕をバシバシ叩いてみたりするけれど、びくともしなくて。

私の抵抗も虚しく、結局、数学準備室の前まで来てしまった。

健「入って」

仕方なく言われるがまま部屋に入ると、後ろから聞こえた部屋に鍵がかかる音に体がビクッとなった。

それを見ていた彼はフッと笑って私の横を通り過ぎていく。

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ここに来たのはあの日以来

あの日のことはもう記憶から抹消したはずなのに、ソファが嫌でも視界に入って自然と耳元が熱くなる。

健「これ、松島に渡しておいて」

そう言って渡されたのは、透明なクリアファイルに入ったプリントと、シューズ入りの袋

多分、というか絶対、聡の忘れ物

健「練習終わった後、忘れてったから

家近いし、届けてやって」

生徒にパシリさせるとか悪い先生だな、ほんと

あんたが届けに行けよ

でも何か見るからに大事そうなプリントだし、届けないわけにはいかないか…

はぁ、とため息つきながら

彼の手から聡の忘れ物を受け取り、クリアファイルをカバンの中にしまい、シューズ袋を手に持つ。

聡には忘れ物しないように言い聞かせないと。