【短編二】脱力系彼氏、藤井くん。

…おめでとう ページ22

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8月18日

00:00






「よし、」






起きてるかもしれないし

寝てるかもしれない

いやたぶん……寝てる、だろうけど






「だめ元で…っ！」






" 流星 " の文字をたどり

通話ボタンをタップした










プルル



" もしもし "

「…うわっ」

" A？"






あまりにも出るのが早くて驚く






「あ…えっと夜遅くにごめんね？」

" ん、ええよ "

「あの、流星…お誕生日！おめでとう！」






誰よりも先に伝えたくて






すると、電話の向こうで

ふふっと笑う声が微かに聞こえた






" 待ってた "

「え？」

" Aのことやから、絶対なんかくるって "






ぴったりに。と

わたしの思考は完全に読まれていた






「ば、ばれたか…」

" わざわざ起きとってくれたん "

「えっとまぁ…」

" ふーん "






いつも通りの短い言葉だけど

でも少しだけいつもより柔らかい流星の声






「えっと、それでプレゼントをね」

" いらへんよそんなん "

「え？」

" あ、用意してくれてるんやったら貰うけど "






なんて意地悪そうな声がして






" なんてゆーか "

「…うん？」

" せやなぁ、プレゼント "






ガラッと電話の向こうで

窓を開けたような音がして

少しだけ風が入った気がした






" もうな、あれやな "

「なに？」

" Aとおれたらそれでええかな "






なんて胸キュンなセリフをサラッと言って

なのに

ふぁ〜、と聞こえたあくびに笑ってしまった






「…そっか。」

" 夏休みって暇やな "

「ちゃんと課題してる？」

" Aに会えへんし "

「…うん、明日会いに行くよ。」

" 来て、朝イチで "

「朝イチで？」

" なんなら今日泊まれば良かったんに "






なんて言いながら

きっと今、窓を閉めた音がした






「…そしたら一緒に迎えられたね。」

" 昨日無理やりでも誘えばよかった "

「ごめんごめん、」

" まぁ…ありがと "






祝ってくれて。とそう言って

眠そうで今にも切れそうな電話に向かって

一番伝えたかったこと








「流星…生まれてきてくれて、ありがとう。」







へへっ、と笑えば

" なんや急に " って笑い返して







" まぁ…Aを守るために生まれてきてんろな俺 "

「…え？」

" ほな明日はよ来いよばいばい "

「あっ」







結局今日も

流星はわたしをドキドキさせる

一枚うわてな脱力系彼氏だ






＿







HAPPY BIRTHDAY ... !

Present from alice *

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