87.誰のもの ページ41
私の手首を掴む兄さんの手に力が込められる。
壁に迫られて、逃げる事は出来なくなった。
目の前に居る兄さんが、ほんの少しだけ怖い。
『ご、ごめんなさい……』
顔を俯けながら、謝る事しか出来ない。
今下手な事を言えば、余計に兄さんの神経を逆撫でする気がした。
でも私の言葉の選択肢は間違っていたのか、兄さんの眉は益々吊り上がる。
「……また、
兄さんは、怒りと悲しみが混ざった声で言う。
私が兄さんをこんなにも悲しませているのだと思うと、心が張り裂けそうになる。
それでも私は、兄さんの顔が見れなかった。
見る事が、怖かった。
兄さんを傷付けてしまった事を受け入れるのが、怖かった。
「こっち見ろよ、A」
私の顎を掴んで、無理やり目を合わせる兄さん。
苦しそうに瞳を揺らした兄さんは、ゆっくりと顔を近付けて来る。
『は、離して……』
「……は?」
私の口から零れ落ちた、弱々しい言葉。
何かがマズいと感じて、咄嗟に拒否してしまった。
私の言葉に目を開いた兄さんは絶望した様に低い声を出したが、直ぐに鋭い視線を向ける。
「……やっぱり、俺を拒むのかよ」
兄さんは、自傷気味に呟いた。
『違う、私は……っ』
「……何も違わねぇよ。お前は、俺をただ受け入れたら良いんだ。A、お前が誰のものか、もう1度分からせてやる」
その瞬間、兄さんの唇が重なった。
『っ……!』
何が起こっているのか分からない。
頭が、グルグルと混乱する。
思わず離れようと兄さんの胸を押すが、ピクリともしなかった。
最初は触れるだけのキスが、どんどん深くなって、息が出来ない。
何度も角度を変えて繰り返される行為に、思考が回らない。
唇をペロリと舐められ、ほんの少しだけ噛まれると、頭に熱が溜まって行く気がした。
『まっ……ん!』
待って、と口を開こうとすると、それを邪魔するかの様に兄さんの舌が割って入って来た。
「ん……A、可愛い」
トロリと、熱を孕んだ目で兄さんが微笑む。
逃げようと舌を縮めても、直ぐに兄さんの舌が追って来る。
よく分からない快感が這いずり回り、生理的涙で兄さんの顔が滲んで見えた。
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こはね(プロフ) - ほんとに冗談抜きで今までのブルロの作品で1番好きです!笑こんなに私のドストライクの作品に出会えてほんっっとに嬉しいです〜!! (7時間前) (レス) id: 1bc7951b1f (このIDを非表示/違反報告)
Banri - poyocooooooさん» コメントありがとうございます!私の作った話をどう評価されるのかいつも気にして投稿しているので、コメントを読ませて頂いてとても自信を持つ事が出来ました!これからもよろしくお願いします! (4月26日 17時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 玲王との関係が私の妄想(笑)と完全一致で展開されすぎていて最新話を読んで鳥肌がたちました😍毎話ドキドキしながら読ませていただいています!他の方も書かれていますが、ほんとに星を一度しか付けられないのが悔しいですが、何度も押してます!! (4月26日 5時) (レス) id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - MaOさん» コメントありがとうございます!やっと玲王君との絡みを出せたと安心していたんですけど、早く他のキャラとの話も書きたいとウズウズしています笑。どのキャラとどう関わっていく事になるのか、楽しみに待って頂けたら嬉しいです! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - shionさん» コメントありがとうございます!今回の話は悩んで作ったので、喜んで頂けてとてもホッとしています笑。コメントはいつでも受け付けているので、これからも気軽にして頂けると嬉しいです!今後もよろしくお願いします! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年2月16日 19時