80.どうして ページ34
-Chigiri side-
久遠の裏切り。
その事実は、俺達に亀裂を走らせた。
12対10と言う圧倒的不利な状況に、俺達はいつ敗北しても可笑しくない戦況に陥っている。
だけど、チームZは誰1人諦めていなかった。
「1点だ!!1点で良いから取れ、お前ら!!この試合は、もう負けなきゃ良い!!引き分けでも良いんだ!!後1点取って追い付けば、引き分けで最終戦にギリ望みは繋がる!!」
鰐間兄弟のシュートを防いだ伊右衛門が叫ぶ。
「取れ!千切!!」
セカンドボールの近くに居た俺は、潔の声にハッとする。
俺だって、負けて良いなんて考えてない。
今走れる最大限の速度で走ったが、その前にボールに触ったのは鰐間兄弟の弟だった。
「遅っせぇなァ♪」
割り込む様にして塞がれた。
そして弟はこちらを一瞥して、口元を歪める。
「お前のサッカー人生、今日俺達が完全終了させてやる」
そのままドリブルで掛けて行く弟。
『何やってんだ、千切!?追え!!』と雷市の怒声が聞こえたが、俺の足は動かない。
何もかもが、雑音の様に響いて鬱陶しい。
あの日から、俺の耳に入ってくる音全てが変わった。
才能は平等じゃない、俺は選ばれた人間だ。
本気でそう信じていたあの頃は、ただサッカーをする為に生まれてきたんだと思っていた。
この
今ではもう、俺の中に残るのは空っぽの器だけだ。
だから、これで良い。
後5分で、
―――これで、ここで、俺のサッカーは終われる。
『千切君、走って!』
聞こえて来たのは、決死の声。
『まだ、終わってない……!』
強い眼で俺を射抜く御影。
絶対に諦めたくないと、その目が語っている。
何で、どうして……。
諦めてしまえば楽になるのに、お前は何で走り続けるんだよ。
お前も、1度挫折した人間なんだろ?
執着するよりも、手放してしまえば生きやすくなるって知ってるだろ?
なのに、どうしてお前は―――そんな顔で俺を見るんだよ。
「俺が決める!俺が!!」
潔が、ボールにしがみつく様に走り出す。
そんなギラついた眼で、ボール追っ掛けてんじゃねぇよ。
そんな風に、自分を信じてサッカーをするな。
御影や潔を見ていると、自分の弱さが浮き出しになって透けてしまう。
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こはね(プロフ) - ほんとに冗談抜きで今までのブルロの作品で1番好きです!笑こんなに私のドストライクの作品に出会えてほんっっとに嬉しいです〜!! (11時間前) (レス) id: 1bc7951b1f (このIDを非表示/違反報告)
Banri - poyocooooooさん» コメントありがとうございます!私の作った話をどう評価されるのかいつも気にして投稿しているので、コメントを読ませて頂いてとても自信を持つ事が出来ました!これからもよろしくお願いします! (4月26日 17時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 玲王との関係が私の妄想(笑)と完全一致で展開されすぎていて最新話を読んで鳥肌がたちました😍毎話ドキドキしながら読ませていただいています!他の方も書かれていますが、ほんとに星を一度しか付けられないのが悔しいですが、何度も押してます!! (4月26日 5時) (レス) id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - MaOさん» コメントありがとうございます!やっと玲王君との絡みを出せたと安心していたんですけど、早く他のキャラとの話も書きたいとウズウズしています笑。どのキャラとどう関わっていく事になるのか、楽しみに待って頂けたら嬉しいです! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - shionさん» コメントありがとうございます!今回の話は悩んで作ったので、喜んで頂けてとてもホッとしています笑。コメントはいつでも受け付けているので、これからも気軽にして頂けると嬉しいです!今後もよろしくお願いします! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年2月16日 19時