69.同じだから ページ23
嗚呼、やっぱり同じだ。
似てるとは思っていたけど、まさかここまで同じだとは思わなかった。
千切君は、私と区別がつかない程同じなんだ。
『……分からないよ』
微かな声に、千切君と潔君の目が私に向けられる。
潔君は純粋に私の言葉に驚いてるみたいだけど、千切君は益々顔を険しくした。
「……は?」
『千切君の苦しみも、辛さも、思いも、私達には分からないよ。私達は千切君じゃないから、思いを汲み取ってあげる事なんて出来ない。千切君が今、どんな気持ちで
私が言葉を紡ぐ度に、千切君は歯を食い縛った。
今にも湧き出そうな怒りを何とか抑え込んでいる、と言ったところだろうか。
「分かってたまるかよ……お前らみたいに何の不自由も無く、のうのうとサッカーをやって来た奴らに」
鋭い、憎悪する様な目。
すぐに潔君が『言い過ぎだろ!』と声を上げたが、私は目を逸らさずに、真っ直ぐに千切君を見る。
『だけど、挫折した時の気持ちは分かるよ。私も1度、サッカーを諦めた人間だから』
「……!」
目を大きく開く千切君。
私の言葉の意味が分からず、『どう言う、意味だよ……』と小さな声を零している。
『私の場合は、怪我をした訳じゃない。でも、もう2度とサッカーが出来ないと思える程の挫折を経験した。私の努力なんて、全部意味が無かったんじゃないかって思えるぐらいに』
あの時の事は、今でも鮮明に覚えている。
目の前で圧倒的な
いっその事、サッカーを諦められた方が楽だった。
だから私はサッカーと距離を取った、もう2度やる事は無いと心に区切りを付けて。
でも、千切君は違う。
『諦める理由を見つけようとしてる時点で、千切君は諦めたくないって思ってるんだよ』
千切君は言葉を無くして、凝視する様に私を見る。
『私は諦めたく無いと思ったから、此処に来た。この場所で、もう1度サッカーがしたいと思った。千切君も本当は、諦める理由じゃなくて、
絶句した様に、千切君は唇を震わせる。
こんな事を言ってしまえば、千切君の思いを踏み躙る事になる。
でもだからって、このまま立ち止まっていて欲しくなかった。
千切君は拳を握り締めると『巫山戯んな……』と呟いて、そのまま部屋から去って行った。
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こはね(プロフ) - ほんとに冗談抜きで今までのブルロの作品で1番好きです!笑こんなに私のドストライクの作品に出会えてほんっっとに嬉しいです〜!! (5月12日 15時) (レス) id: 1bc7951b1f (このIDを非表示/違反報告)
Banri - poyocooooooさん» コメントありがとうございます!私の作った話をどう評価されるのかいつも気にして投稿しているので、コメントを読ませて頂いてとても自信を持つ事が出来ました!これからもよろしくお願いします! (4月26日 17時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 玲王との関係が私の妄想(笑)と完全一致で展開されすぎていて最新話を読んで鳥肌がたちました😍毎話ドキドキしながら読ませていただいています!他の方も書かれていますが、ほんとに星を一度しか付けられないのが悔しいですが、何度も押してます!! (4月26日 5時) (レス) id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - MaOさん» コメントありがとうございます!やっと玲王君との絡みを出せたと安心していたんですけど、早く他のキャラとの話も書きたいとウズウズしています笑。どのキャラとどう関わっていく事になるのか、楽しみに待って頂けたら嬉しいです! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - shionさん» コメントありがとうございます!今回の話は悩んで作ったので、喜んで頂けてとてもホッとしています笑。コメントはいつでも受け付けているので、これからも気軽にして頂けると嬉しいです!今後もよろしくお願いします! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年2月16日 19時