68.夢を諦める理由 ページ22
「でも、まだそれをお前は直感でやってる。だからもっと意識的に使える様になれば……その眼と脳は、唯一無二の武器になる」
『と、
確かに、千切君の言う通りかもしれない。
私が潔君のプレーに感じていたのは、きっとその能力の高さだ。
『私もそう思うよ』と同調する様に言えば、潔君は少し驚いた様な顔をして、フッと口元を緩めた。
「へぇ、なるほど、ありがと千切。何か、凄ぇヒントになった気がする」
「別に、チームが勝つ為に言ってみただけだし」
素っ気ない言い方だが、千切君は決して悪い人では無い。
あまり話した事が無いから彼の事をよく知らなかったけど、潔君の武器を見つける程チームの事をよく見ていてくれたのだろう。
「そーいや、お前の武器って何なの?」
武器関連で思い出したのか、潔君が問い掛ける。
でも千切君は、無言で俯いた。
『千切君は言いたくないって言ってたし、無理に聞き出さない方が良いよ』
「でも俺も何か出来る事あったら手伝うし、チームが勝つ為に知りたいよ」
「だから良いんだって、俺の話は……」
千切君はもう聞かないでくれと拒否する様に言ったが、それでも潔君は『大事な事だろ?』と引き下がらなかった。
その言葉に千切君は影を落として、自身の右足を触った。
「右膝前十字靭帯断裂、1年前俺は怪我をした」
膝を撫でながら言われた言葉に、私と潔君は何も言う事が出来なかった。
「医者には……もう1度同じ箇所をやったら、選手生命は危ういって言われた。だから怪我が治った今でも、まだ同じ様にプレー出来ない」
そう言って立ち上がった千切君は、『俺にもあったんだ、潔』と視線を向けずに言葉だけを紡いだ。
「お前みたいに凄い武器と、自分のゴールに酔いしれて眠れない夜と、世界一のストライカーを夢見てた瞬間が。俺は夢を諦める理由を探しに、
そう言い残して立ち去ろうする千切君。
その瞬間、バッと潔君が立ち上がる。
「嘘つけ千切、他人のせいにすんなよ……本当は諦めたく無いんだろ?俺だって一緒だ!無くす覚悟の無い人間に、夢なんか掴める訳無い!!」
怒りを含んだ潔君の言葉に、千切君は足を止める。
でも静かに振り返ったその顔には、潔君以上の怒りが浮き出ていた。
「お前に、俺の何が分かんだよ」
千切君の威圧に、潔君は押し黙ってしまった。
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Banri - こはねさん» コメントありがとうございます!1番好きだと言って頂けるのは、何よりの励みになります!これからも好きだと言って頂ける様に、更新頑張りますね!今後もよろしくお願いします! (6時間前) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
こはね(プロフ) - ほんとに冗談抜きで今までのブルロの作品で1番好きです!笑こんなに私のドストライクの作品に出会えてほんっっとに嬉しいです〜!! (5月12日 15時) (レス) id: 1bc7951b1f (このIDを非表示/違反報告)
Banri - poyocooooooさん» コメントありがとうございます!私の作った話をどう評価されるのかいつも気にして投稿しているので、コメントを読ませて頂いてとても自信を持つ事が出来ました!これからもよろしくお願いします! (4月26日 17時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 玲王との関係が私の妄想(笑)と完全一致で展開されすぎていて最新話を読んで鳥肌がたちました😍毎話ドキドキしながら読ませていただいています!他の方も書かれていますが、ほんとに星を一度しか付けられないのが悔しいですが、何度も押してます!! (4月26日 5時) (レス) id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - MaOさん» コメントありがとうございます!やっと玲王君との絡みを出せたと安心していたんですけど、早く他のキャラとの話も書きたいとウズウズしています笑。どのキャラとどう関わっていく事になるのか、楽しみに待って頂けたら嬉しいです! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年2月16日 19時