66.似ている ページ20
夜、就寝時間が巡って来た。
殆どの人がもう眠りに就いているが、私はまだ目を開けて寝れずに居た。
何度も寝返りを繰り返して寝ようと努力してみたが、まだ試合の興奮が残っているのか、脳内が寝る事を拒否している。
その時、誰かが部屋から出て行く足音が聞こえた。
こんな時間に誰だろう。
何となく気になり、足音を出さないように気を付けながらその人物の後を追った。
その人物が向かった先は、相部屋の斜め右向いにあるモニタールームだった。
『千切君、こんな時間にどうしたの?』
「……御影」
どうやら、先程の足音は千切君だった様だ。
チームYとの試合風景をモニターに映しながら、座って見ている。
千切君は『今日の試合見てた、寝れなくて』と呟いて、こちらに視線を向けた。
「御影も寝れないんだろ。隣、座れば?」
『あ、うん』
ポン、と自分の隣を手で触る千切君。
その言葉に頷いて隣に座ると、同じ様にモニターを見上げた。
『この映像、潔君がゴールを決めたところだよね?』
映像に映っているのは、潔君がゴールを決めている瞬間だった。
そのゴールを虚ろな目で眺めている千切君の心情は読み取れないが、微かな羨みが混ざった様に瞳が揺れている気がした。
「御影は此処に来る前から、潔と知り合いだったのか?」
『うん、同じ高校だった』
「その時から仲が良かったのか?」
『いや、話したのも数える程度だよ。私、周りの人と壁を作ってたから、多分潔君も近寄り難かったんだと思う』
「近寄り難いね……」
『でも、今は友達になれたら良いなとは思ってるよ』
千切君と、ポツポツと会話を交わす。
私は質問された事に答えて、お互いに無言になってばかりだ。
でも変に居心地が悪くなくて、寧ろ安心感すらあった。
多分、兄さんと一緒に居る感覚に近い、彼の雰囲気が兄さんに似ているのだ。
そんな千切君は『友達か、少なくともあいつはそう思ってないだろうな。まぁ、潔に限らねぇけど』と、遠い目をしながら告げる。
え……潔君には、友達なんかなりたくないと思われているのだろうか。
しかも潔君に限らないって事は、他にもそう思っている人が居るって事?
それは、普通に落ち込む……。
「千切、御影さん……何してるの?」
扉が開く音がして振り向けば、怪訝そうな顔をした潔君が立っていた。
『何しに来た』と千切君が問えば、潔君は『寝れなくて』と素っ気なく呟いて、詰め寄る様に私の隣に腰を下ろした。
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Banri - こはねさん» コメントありがとうございます!1番好きだと言って頂けるのは、何よりの励みになります!これからも好きだと言って頂ける様に、更新頑張りますね!今後もよろしくお願いします! (4時間前) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
こはね(プロフ) - ほんとに冗談抜きで今までのブルロの作品で1番好きです!笑こんなに私のドストライクの作品に出会えてほんっっとに嬉しいです〜!! (5月12日 15時) (レス) id: 1bc7951b1f (このIDを非表示/違反報告)
Banri - poyocooooooさん» コメントありがとうございます!私の作った話をどう評価されるのかいつも気にして投稿しているので、コメントを読ませて頂いてとても自信を持つ事が出来ました!これからもよろしくお願いします! (4月26日 17時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 玲王との関係が私の妄想(笑)と完全一致で展開されすぎていて最新話を読んで鳥肌がたちました😍毎話ドキドキしながら読ませていただいています!他の方も書かれていますが、ほんとに星を一度しか付けられないのが悔しいですが、何度も押してます!! (4月26日 5時) (レス) id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - MaOさん» コメントありがとうございます!やっと玲王君との絡みを出せたと安心していたんですけど、早く他のキャラとの話も書きたいとウズウズしています笑。どのキャラとどう関わっていく事になるのか、楽しみに待って頂けたら嬉しいです! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年2月16日 19時