41.チームの生まれ方 ページ43
キングさんの低い声に冷や汗を流したその選手は、『もうしねぇよ!』と言い残すと、すぐに離れて行った。
『あ……』
庇ってくれたのかどうかは分からないけど、何か言った方が良いかもしれない。
そう思ったものの、私が口を開く前にキングさんは背を向けて去ってしまった。
「Aちゃんの事、助けてくれたのかな?」
『どうだろう……』
キングさんの後ろ姿を見ながら、蜂楽君は不思議そうに呟いた。
でも私にはその答えが分からず、小さく首を横に振る事しか出来ない。
「御影さん、怪我は無い?」
『うん。少し背が痛いけど、プレーには支障無いよ』
「クソッ、ナメた真似しやがって」
「御影、あまり無理するなよ」
雷市君はまだ体当たりして来た選手を苛立ち気味に睨み付けていたが、潔君と國神君はそっと手を差し伸べてくれる。
とりあえず私に大怪我が無い事を知って、皆ほっと安堵した様に表情を緩めた。
・
それから試合は再開したけど、嫌になるぐらいに一方的な試合が続いていた。
チームZは相変わらず自分ばかりで、チームXとは点数が開いてばかりだったのだ。
きっと、キングさんの様な存在が“1”なんだ。
お団子サッカーが“0”とするなら、あのお団子サッカーの中たった1人でもゴールを奪ったキングさんのプレーは“1”になる。
その強烈な“1”が仲間の指針となって、キングさんを中心に勝つ為の策略が生まれてチームが生まれるんだ。
絵心さんが伝えたかった事はそう言う事なのだろう。
私達はこの試合で1度も纏まる事が出来ず、試合終了まで残り3分となってしまった。
「あー、ずっと走らされてるだけだし……あと3分で5点は無理ゲーだね……」
蜂楽君は備わっている壁時計を見上げながら、力無く告げる。
私を含めて、ボールをセンターサークルに置き直している潔君も無言のままだ。
この試合には負けてしまうと分かっているからこそ、蜂楽君の言葉が重く感じてしまう。
「でも、1点ならいけるかも。俺と潔と、Aちゃんで」
「蜂楽……」
確信めいた発言では無かったが、その言葉に何か希望を感じたのか潔君は顔を上げた。
「相手も気ぃ抜いてるし、ノーマークの1回こっきりなら決まるかも……ってやり方だけど」
そう言った蜂楽君は、私と潔君に視線を向ける。
「やる?」
「『……やる』」
私と潔君は、迷う事無くその問いに頷いた。
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Banri - アイズさん» コメントありがとうございます!少しゆっくりになるかもしれませんが、更新頑張ります!これからもよろしくお願いします! (1月26日 11時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
アイズ(プロフ) - 更新待ってます! (1月26日 7時) (レス) id: f7fb020bf2 (このIDを非表示/違反報告)
Banri - コメントありがとうございます!そんな風に言って頂けて、とても嬉しいです!更新頑張りますね、これからもよろしくお願いします! (1月21日 11時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
MaO(プロフ) - 一気読みするほど、とても良かったです!続きを楽しみに待っています!応援しています! (1月21日 10時) (レス) id: 96e9700f7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年1月16日 18時