02.謎の男性 ページ4
今スタジアムの中心では、勝利の決定打を放った吉良君がアナウンサーに輝く様な笑顔でインタビューを受けている。
カシャカシャと何台ものカメラを向けられているその姿は、まさしくスターだった。
そんな彼を一瞥した後、もう帰ろうと思い、椅子から立ち上がる。
「君、負けた一難高校の生徒だよね?君があの最後の11番の立場なら、どうしていた?」
『え……?』
突然、ずっと隣で試合を眺めていた眼鏡の男性が私に問い掛けて来る。
いきなり話し掛けられた事に驚き、思わず足を止めて振り向いてしまった。
本当に3食食べているのだろうかと、疑問に思える程の細身。
それと同時に、十分な睡眠は取れていないのだろうと分かる大きな隈……。
何と言うか、だいぶ怪しい男性の姿に微かな警戒心が生まれる。
でも、彼が聞いて来た質問は何故か無視する事が出来なかった。
『私なら……多分シュートを選んでいたと思います』
「……へぇ?どうして?」
ニヤリと興味深そうに笑みを浮かべた男性の姿に少しだけ言葉を詰まらせたが、視線を逸らしながら告げる。
『確かにあの場面では、パスを出した方が確実に点数が入る可能性が高かった……だけど、結局その賭けは失敗に終わった。
味方にパスを出して負けるぐらいなら、自分がシュートを選択してミスをした方が悔いは残らないと思うんです』
これは完全に私個人の意見だ、こんな自己中な考えが肯定されるとも思っていない。
きっと、この男の人にも否定される。
そう思っていたけれど、何を考えてか彼は益々笑みを深くして満足そうに頷いた。
「それこそが、ストライカーの本質に必要な脳だ。やはり、君は俺の予想通りだ……いや、それ以上だった」
『あ、あの、それはどう言う……』
私は何か、面白い事を言っただろうか。
眼鏡の男性は面白可笑しそうに肩を揺らすと、ふと私の方を一瞥する。
ちゃんと目を見たのは初めてだったから、少しだけ緊張してしまった。
だけど彼はそんな事気にも止めないのか、愉快そうに笑って椅子から立ち上がる。
『また近い内に会えると良いね』と呟いた男性は、そのままスタジアムの出口へと向かって行ってしまった。
『何だったんだろう』
凄く後味の悪い終わり方になってしまったけど、彼は結局何者だったのだろうか。
見るからに只者では無いオーラはあったけど……。
私が彼の正体を知る事になるのは、もう少し後の話だった。
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Banri - アイズさん» コメントありがとうございます!少しゆっくりになるかもしれませんが、更新頑張ります!これからもよろしくお願いします! (1月26日 11時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
アイズ(プロフ) - 更新待ってます! (1月26日 7時) (レス) id: f7fb020bf2 (このIDを非表示/違反報告)
Banri - コメントありがとうございます!そんな風に言って頂けて、とても嬉しいです!更新頑張りますね、これからもよろしくお願いします! (1月21日 11時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
MaO(プロフ) - 一気読みするほど、とても良かったです!続きを楽しみに待っています!応援しています! (1月21日 10時) (レス) id: 96e9700f7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年1月16日 18時