43、シンプルな部屋 ページ43
勝手に色々想像していた川島の部屋は、ベッドとテーブルとミニコンポがあるだけの、シンプルな部屋だった。
なんか……川島らしい。
ぐるぐると部屋を見渡し、出窓に目をやった。
川島が好きだと言っていた洋楽のCDが数枚。
その横に、見たことのある箱を見つけた。
「……ねぇ。コレって私が渡したチョコの箱…?」
箱を手に取ると
「わっ、ちょ、いいからっ!!」
慌ててその箱を奪い取り、押し入れへと放り投げた。
……もしかして
箱、捨てないで取っておいてくれた……?
「……なに笑ってんの」
「ごめん」
だってこんなの、嬉しすぎる。
木彫のテーブルに向かい合って座った私たちは、私が手土産に持って来たケーキを食べながら、いつもの電話のようにお互いの学校生活などを教え合った。
川島は、部活が本当に忙しくて、疲れすぎて夕食を食べないで寝てしまうこともあると言った。
確かに、川島の学校のサッカー部はここら辺じゃ一目置かれるくらい強くて有名だけど
そっか、そんなに大変なんだ……。
……あ。そう言えば。
「この前。疲れてるのに、電話に付き合わせちゃってごめんね……?」
私の言葉に「この前……?」川島が私を見た。
「うん。川島が電話落としちゃった日」
「……あ」
「あの…、あれだから!
疲れてる日とか眠たい日とか、電話、無理しなくていいからね?」
本音か…と言われれば、違うけど。
無理はして欲しくなくて伝えた言葉に川島が答えた。
「……や…。あれ、ウソだから」
「え?」
「……疲れて電話落としたとか…ウソ」
……ん?
「……知らない男の話なんか聞きたくないっていうか…」
「え?」
「……他の男の話なんか、聞きたくなかったから」
「……」
……うそ!!
川島がヤキモチ妬いてくれたってこと!?
「うっ、うんっ!ごめん!!」
ヤバイ…。
幸せすぎて、泣きそうだ。
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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月1日 12時