28、バレンタインデー ページ28
２月１４日
バレンタインデー当日。
今日は朝から早起きをして、いつもよりも時間をかけて髪の毛をセットした。
テーブルの上には、ピンクのリボンのついた箱がひとつ。
その箱がつぶれないように気を付けながらカバンにしまい、「行って来ます」家を出た。
…さて。
問題はどのタイミングで渡すか、だ。
放課後、呼び出す？
階段の踊り場に来てもらう？
どうしよう、どうしようと悩んでいる時に、そのチャンスはやって来た。
「A。次視聴覚室だって」
「あーわかった。トイレ行ってくるから、先に行ってて〜」
みんなが移動していく中、急いで用を済ませ教室に戻ると
そこに川島がいた。
私に気付いた川島が、ガタガタと椅子を直した。
「あ……教科書忘れて…」
「そ、そうなんだ」
川島の手には、教科書が一冊。
教室には私たち以外誰もいない。
今しかない…！
私とふたりきりの教室が気まずいのか、急いで出て行こうとする川島を
「待って、川島！」
私も慌てて呼び止めた。
「こ、これ……っ」
そしてカバンから、ピンクのリボンの箱を取り出した。
「……え？」
差し出した箱を見て、一瞬驚いたように私を見た川島が
「あー…、あ、りがとう」
スッとその箱を受け取り、その場ですぐに自分のカバンに詰め込んだ。
そしてもう一度私を見て、照れたように笑ってバタバタと教室から出て行った。
誰もいなくなった教室。
は、はぁ〜〜〜〜〜〜っ
一気に気が抜け、そこにあった椅子に腰を下ろした。
き、緊張した〜〜〜〜〜っ
けど、渡せたっ!!
何度もしたイメトレ通りにはならなかったけど。
むしろ、ただ渡しただけになっちゃったけど。
それでも私の胸は、やりきった想いでいっぱいになった。
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作者名：ユチコ | 作成日時：2018年7月1日 12時
