27、打ち明ける ページ27
さすがに三学期ともなると、今までとクラスの雰囲気が違って見えた。
休み時間やお昼休みも、参考書や単語帳を開く人が増えた。
「受験生、って感じだよね」
同じことを感じていたのか、茜がため息をつく。
「うん…」
あと数か月で卒業を迎える私たちは、これからみんなバラバラの道を歩む。
私と茜、美香は、成績的にも志望校が一緒。
川島は、倍率が毎年凄く高い工業高校を志望していると、智美が言っていた。
このまま受かれば、高校は別々になる。
だけど失敗すれば、滑り止めに受けている学校は私も川島も同じ。
同じ学校に行きたい…、なんて。
それはきっと口に出してはいけないこと…。
2月になると、なんとなく女子が浮足立って来た。
女子にとっての一大イベント、バレンタインデーが目前となったからだ。
洩れずに私も、そのひとり。
川島にチョコレートを渡したい。気持ちだけでも伝えたい。
毎日そんな事ばかり考え過ぎて
川島への自分の想いを、ひとりで処理しきれなくなっていた。
でも。
川島にチョコレートを渡す前に、ちゃんと向き合わなきゃいけない人がいる…。
ある日の放課後。
私は、智美を階段の踊り場に呼び出した。
「どうしたの?」
呼び出された理由に見当もつかないといった智美に、私はやっと自分の胸の内を白状した。
私の告白を聞いて、少し驚いてから
「え、じゃあAとはライバルだね!お互い頑張ろ〜!」
智美は、豪快に笑ってくれた。
それから智美とは、川島のことでよく話をするようになった。
あの表情可愛いよね、とか、さっきの姿カッコよかったよね、とか。
まるで、好きな芸能人を見て喜びを共有し合うファンみたいに、川島のふとした仕草や態度を見て、ふたりできゃあきゃあ盛り上がった。
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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月1日 12時