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189、初めてのお誘い ページ42

───ガッシャーン!!!

両替機の小銭をひっくり返す音にビクッと身体が揺れたのは、水曜日の朝だった。



「失礼致しました!」

「あ〜、もう何度目だと思ってるんだ!しっかりしてくれ!」


怒られたのは私じゃない。
あの佐藤さんだ。


「佐藤さんどうしたんだろ?ここのところ変だよね」

隣の同期の女の子の小声に、うんうん、と頷く。

いつも仕事は正確で、誠意を持ってお客様と接している佐藤さんが、最近ずっと上の空。
さっきなんかお客様から『愛想がない』なんてクレームまでつけられていた。

「どうしたの?」って声をかける同僚に、笑いながら「ごめん、大丈夫」とだけ答える佐藤さん。
大丈夫そうにはとても見えなかった。
こんな佐藤さんを見るのは、私ももちろん初めてだ。



仕事が終わり更衣室のドアを開けると、制服も着替えずにボーッと椅子に座っている佐藤さんがいた。


「…お疲れ様です」

窺うように小さく声をかけると、佐藤さんの虚ろな目がゆっくりと動いた。


「お疲れ様……」

今まで聞いたこともない弱々しい声。


なにか、あったんですか?って。
声をかけたいけど、私なんかが声をかけていいものかどうか…。

ボーっと座ったままの彼女を目の端で気にしながら、静かにロッカーを開けた。

制服のリボンを外す音。服と服が擦れる音。
いつもの話し声や笑い声が聞こえない更衣室は、ものすごく居心地が悪い。

他の女子行員たちが「お先に…」と出て行くのに続いて

「お先に失礼します…」私もドアに手をかけた時だった。



「栗原さん」


それまで黙って座っていただけの佐藤さんが突然口を開いた。


「は、はい」

振り返ると、佐藤さんが私を見ていた。


「栗原さん、今日って忙しい?」

突然の問いかけに、心の中で「え?」と思った。


「いえ、特に忙しくは……」

「そう。じゃあ良かったら飲みに行くの付き合ってくれない?」

「……え?」





びっくりした。
予想もしていなかったから。

佐藤さんにこんな風に誘われたのは、初めてだ。

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作品ジャンル:恋愛
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ユチコ(プロフ) - おにぎり侍さん» 最初から読んでくださりありがとうございます!中学生の出会いから始まった二人の関係が今後どのようになっていくのかも楽しんで貰えるように頑張りますね! (2018年8月19日 17時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユチコ(プロフ) - 絵蓮(エレン)さん» コメントありがとうございます!最初から読んでくださってるなんて嬉しいです〜( ;∀;)もっとキュンキュンをお届けできるように頑張りますね! (2018年8月19日 17時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり侍(プロフ) - 1から読みました!中学から大人になるまで…最高です! (2018年8月19日 12時) (レス) id: 3b05885be4 (このIDを非表示/違反報告)
絵蓮(エレン)(プロフ) - 続編おめでとうございます!1の時からずっと見させてもらって、キュンキュンしてます!← 更新頑張って下さい! (2018年8月18日 22時) (レス) id: 75d02ce64f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年8月18日 18時

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