170、月末の旅行 ページ23
待ちに待った月末。
昨日まで降っていた雨が、からりと上がった。
旅行先はふたりで函館に決めた。
「お金…ある。着替え、タオル、化粧品も持った」
朝からそわそわと、何度もカバンの中身をチェックして。
カバンの隅に入れた先日買ったばかりの下着を見てドキドキ胸を鳴らした。
「そろそろ来るかな……」
玄関前で川島の車をキョロキョロと待っていた時だった。
鳴り出した携帯をカバンから取り出し、表示された名前を見てドキッとした。
『A?俺、涼』
入院中の涼からの電話だった。
「あ、うん。朝からどうした?もしかして何かあった!?」
『何だよそのテンション!何もないよ。いや、明日退院が決まったからただの報告』
「やったじゃん!!良かったね!!」
『ん。ありがと。これでやっとシャバに戻れるぜ』
「シャバって。笑」
元気そうな涼の声と嬉しい知らせにホッとして、玄関前の階段に腰を下ろした。
「退院の時は?誰か来てくれるの?」
『兄貴と母さんが来るって』
「良かった。札幌にはいつ戻るの?」
『体調次第だけど、試験もあるから来週中には戻ろうかなと』
「そっか。戻る前にご飯でも行きたかったけど…」
『行きたかった、じゃないよ。行くよ?絶対行くからな?』
電話の向こうで念を押す涼に笑っていると、目の前に白のハイラックスサーフが停まった。
運転席から川島が手を振ってる。
「あ、ごめん涼。じゃあ私出かけるから…」
『そうなんだ?ん、わかった』
「じゃあ、またね」と切った携帯をカバンの中に押し戻して車に駆け寄った。
「電話、大丈夫?」
助手席に乗った私に、缶コーヒーを差し出しながら川島が言った。
「あ、うん。平気」
そう言って、私も缶コーヒーを受け取った。
「じゃあ出発するね。遠いから眠くなったら寝ていいから」
私の頭をポンポンと撫でた川島は、そうしてゆっくりと車を発進させた。
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ユチコ(プロフ) - おにぎり侍さん» 最初から読んでくださりありがとうございます!中学生の出会いから始まった二人の関係が今後どのようになっていくのかも楽しんで貰えるように頑張りますね! (2018年8月19日 17時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユチコ(プロフ) - 絵蓮(エレン)さん» コメントありがとうございます!最初から読んでくださってるなんて嬉しいです〜( ;∀;)もっとキュンキュンをお届けできるように頑張りますね! (2018年8月19日 17時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり侍(プロフ) - 1から読みました!中学から大人になるまで…最高です! (2018年8月19日 12時) (レス) id: 3b05885be4 (このIDを非表示/違反報告)
絵蓮(エレン)(プロフ) - 続編おめでとうございます!1の時からずっと見させてもらって、キュンキュンしてます!← 更新頑張って下さい! (2018年8月18日 22時) (レス) id: 75d02ce64f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年8月18日 18時