*:..。o○☆アイノカタチ4*:..。o○☆○o

160、別れた後の事 ページ13

数人を乗せたエレベーターが、静かにドアを閉めた。

な、なんだろう。
なんか変な組み合わせ。

黙って私を見る涼のお兄さんと何を話したらよいものかオロオロしていたら。

急にお兄さんがふふっと笑った。


「やっぱあんた、悪い女には見えないね」

「…え？」

「いや、涼さ〜、あんたと別れてから色んな女、家に連れ込んでたからさ。
よっぽど酷い振られ方したのかなって思って」


笑いながら私の頭をポンッと撫でたお兄さん。



「まぁ、また見舞いにでも来てやってよ」

そう言って、次に来たエレベーターに乗って行ってしまった。




車に乗り込み、エンジンをかける。

お兄さんに会ってから一言も話さない茜に

「……ねぇ」話しかけた。


「さっきのお兄さんの話…ホント？」

助手席に座っている茜が、そっと顔を上げた。


「…ごめん。拓哉がAには言わないほうがいいって言ってたから…。
涼くん…Aと別れてから荒れて酷かったんだ。だけど、Aも自分の気持ちに素直に行動しただけだし、誰も悪くないってあたしはそう思ってたから…黙っててごめん」


下を向き、申し訳なさそうに茜が謝る。


「なんで茜が謝るのよ。っていうか…逆にふたりに気を遣わせてたんだね。こっちこそごめんね」


静かな車内。エンジンの音がやけに大きく感じる。

さっきまで空腹を訴えていたお腹が、キリキリと疼いた。


川島と別れた後、私がどんなに苦しんだのかを川島が知らないように


私も涼の苦しみを知らなかった。

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