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96、泣いてはいけない ページ46

2階には部屋が3つ。

階段を上った先の一番奥が涼の部屋。
その隣が一番上のお兄さんの部屋で、そのまた隣が涼にそっくりな下のお兄さんの部屋。

今日はお兄さんたちはいるのかな…?

静かに歩きながら、涼の部屋のドアを開けた。


大きな窓にかかったグレーのカーテン。
センターにある、小さなテーブル。
基本的に綺麗に纏まっている涼の部屋を見渡していると


「…なにしてんの。座って」

涼が戻って来た。

紅茶を持って。


「ホットで良かった?アイスの方がいいって言ったんだけど母さんがホットだって言い張って」

テーブルの上に置かれた可愛い花柄のカップを見ながら

「嬉しい…憶えててくれたんだ」

思わず呟いた。


「…え?」

「あ…、前にね?涼のお母さんにホットとアイスどっちがいいかな?って聞かれたときに、私ホットが好きですって答えたから…」

「あ〜、なるほど。母さん、Aのこと好きだから」

言いながらテーブルの前に座った涼に続いて、私も向かいに静かに腰を下ろした。



「…………」

「…………」


窓もドアも締め切っているせいで、何も音が聞こえない。

あるのは二人を包む沈黙だけ。

珍しい。涼といてこんな風に沈黙になることはほとんどなかったのに。
……あ、そうか。待っているんだ。
涼は、私が話し出すのを待っているんだ…。

でも、どうしよう。

勇気が出なくなっちゃったよ…。


涼のお母さんが淹れてくれた甘いお花のような香りがする紅茶を黙って二人で飲んでいたら。




「いいよ。ハッキリ言って」


涼が突然口火を切った。




「別れたいと思っているんでしょ?」



ドキン、とした。


「涼…っ、ごめん私ね…っ」

「好きな男でも出来た?」


淡々と。
表情ひとつ変えずに私を見る涼。


「そうじゃなくて…」

「じゃあ俺のことが嫌いになった?」


こんな涼を初めて見る。


「そうじゃないの。涼は何にも悪くないの。
全部私が…、私が自分の気持ちに気付かなかったから…っ」


怖かった。
涙が、零れそうだった。

でもここで泣くのは卑怯だと。
泣く権利なんかないんだと、押し黙った私を見て、「はぁ…」と息を吐いた彼が、視線を下に落としたまま言った。



「もしかして。別れる理由は川島…?」

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設定タグ:オリジナル , 恋愛 , 青春   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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ユチコ(プロフ) - Blueheartさん» コメントありがとうございます!嬉しい〜( ;∀;)更新頑張ります〜☆ (2018年7月29日 16時) (レス) id: 05c74de8b4 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 更新頑張ってください! (2018年7月26日 18時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月16日 12時

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