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ウサギはよく泣く。
彼が来ると逃げ、そして泣く。
今日はピクニックをしていた。
春のような暖かい風に吹かれながら食べるサンドイッチはとても美味しかった。
ウサギは食べる事ができないけど、私が食べてるのを見て羨ましそうだった。
お腹もいっぱいになって、ウサギと一緒にお昼寝の時間。
ふと人の気配を感じて目を開ければ彼が居た。
未だ寝たままのウサギを起こさないように起き上がる。
「おはよう、A。」
『おはようございます…!』
にこにこと機嫌の良い彼。
暫く談笑していればウサギが目を覚ました。
彼を見つけ、そして私の後ろに隠れる。
ぐすぐすと泣く声に彼は驚いた様子だった。
「そのぬいぐるみは特別なんだね。」
『ふふ、はい。』
「これまで動くぬいぐるみは見た事あったけど、泣くぬいぐるみは初めてだよ。」
「こんにちは。」と挨拶をする彼。
ウサギは出てこない。
『大好きな人に挨拶しないの?』
いやいやと首を振る。
結局ウサギは泣き止まず、彼の前にも現れなかった。
残念そうな彼を見て仕方が無い、と笑う。
『このウサギは寂しがりやさんなんです。』
「…クイズかい?」
『そんな感じです。だってずっとすれ違ってるから…、手助けしたいと思うのは間違いなく私自身の思いですよ。』
「まるで今までの感情は君のものじゃないと?」
『半分正解ですし、半分不正解です。』
難しい表情で私を見つめる彼に微笑む。
『ウサギはさみしい。さて、それは何故でしょう?』
考え込む彼。
ただ沈黙が過ぎて行く。
『解答はウサギにお願いしますね。』
時間で消え行く彼に云う。
頷いた彼。
完全に消えたのを見届け、ウサギを抱き上げる。
『逃げてばっかじゃさみしいままだよ。』
うるうると泣きそうなウサギ。
『私はずっと一緒だよ。でもさみしいでしょ?彼が来る度泣いてるよ。』
『この世界はわたしが願えば叶うんだよ。』
『素直になろう?』
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作者名:くろす | 作成日時:2023年8月31日 16時