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「どうして家の中はぬいぐるみだらけなんだい?」
何処を見渡してもぬいぐるみ。
大中小様々なぬいぐるみが家中に置かれている。
彼は棚に置いていたネコのぬいぐるみを持ち上げてそう云った。
『さみしくないから、ですかね?』
ぬいぐるみを抱き締めると、まるでひとりじゃないよ。って元気付けてくれてる様な気がする。
そう云えば彼は表情を暗くした。
『でも最初からこんなに沢山あった訳じゃないんです。』
「そうなのかい?」
『はい。気に入った子を買っていたら気付いたらこんないっぱいに。』
くすくす笑えば彼は困ったように笑う。
「これ以上増えると大変だよ?」
『大丈夫です!もう買いません!』
「ほんとうに?」
『はい!だって一番の子を見つけたので!』
じゃん!と膝の上に乗っていたウサギを見せつける。
「かわいいウサギだね。」
『ふふっ!でしょう?』
そっとウサギの頭を撫でる。
ふわふわとした手触りが心地良い。
『このウサギさんは寂しがりやさんなんです。』
「…まるでAみたいだね。」
『お揃いみたいでいいでしょう?』
ウサギを抱き締めて云う。
彼は何も言わず、微笑んで消えた。
ぷるぷると震え、次第に泣き出すウサギをあやす。
さみしい。
『大丈夫だよ。』
逢いたい。
『逢いたいねぇ。』
でも逢いたくない。
『そうだねぇ。』
ぎゅう、と私の服を力いっぱい掴むウサギの背中を撫でる。
『何もかも忘れちゃえば楽なのになぁ。』
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作者名:くろす | 作成日時:2023年8月31日 16時