9話［望ませるアイドル］ ページ11
No side
***
『流石に広いですね。』
事務所のレッスン場を見ながら、Aはポツリと呟いた。
「音楽は私が流しますね。」
マネージャー小鳥遊がそう言うと、お願いしますとAは笑顔を浮かべる。
アイドリッシュ7のメンバーは、謎の後輩の歌とダンスを心待ちにしていた。
今Aの身に付けている服は緑と白を貴重とした動きやすい服だ。
先程までは黒を貴重とした格好だったが、その格好じゃ動きづらいだろうということで二階堂の服を着ている。
Aが首の骨をポキポキならした後、では、と言って小鳥遊が音楽を流した。
ドクンッと。
音楽と共に動き出したAを見て、メンバーは胸を高鳴らせた。
アップテンポな音楽に、先程までのAからは想像できない激しいダンス。
まだ歌い初めてもいないのに、Aのダンスと表情だけで圧倒されていた。
『っ♪〜〜〜〜………………。』
Aが歌い出したとたん、ゾオッと鳥肌がたつほどAの声に、表情に、ダンスに引き込まれる。
まるでAから目をはなす事は許されないとばかりに強引に。
誰一人として、声を出すことはなかった。
ゴクリと唾を飲み込むだけ。
瞬きすら忘れ、Aに見入っていた。
動くたびに揺れるストレートの黒髪が。妖しく微笑むAの表情が。
アイドリッシュ7にはない魅力。
否、TRIGGERやRe:valeにもない。
この"強引"さこそがAの魅力なのだ。
客に望まれるアイドルではなく、客に"望ませる"アイドル。
曲が終わり、一気に静まり返る空間。
『……あの？』
終わりましたけど、と首をかしげるA。
「おいおいマネージャー。とんでもねぇの拾ってきたんじゃねぇの？」
小鳥遊の隣にいた二階堂がボソッと言う。
それに小鳥遊はコクンと頷いた。
「素晴らしかったです、開城さん！
それに曲もダンスも歌も、全て貴方を魅せるために計算しつくされたものです！紛れもない貴方しか歌いこなせません！」
それを聞いたAは複雑そうに笑顔を浮かべる。
『ありがとうございます。』
この笑顔の裏に隠されたものを、ここにいる人間はまだ知るよしもない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 640人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しーちゃん(プロフ) - 咲夜架さん» ありがとうございます！本当嬉しい限りで…！お互い頑張りましょうね！ (2017年3月20日 22時) (
レス) id: 2262265ad5 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜架(プロフ) - しーちゃんさん» ありがとうございます！作者さん、白雨の探偵も書かれていらっしゃったんですね！そちらの作品もお気に入りでしたので驚きました！！どちらの作品もとても面白いです！！これからも応援しています！！ (2017年3月20日 22時) (レス) id: 3417dbbffc (このIDを非表示/違反報告)
しーちゃん(プロフ) - 咲夜架さん» ありがとうございます！とても励みになりました(*^^*)咲夜架さんも頑張って下さい！ (2017年3月20日 20時) (レス) id: 2262265ad5 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜架(プロフ) - しーちゃんさん» レスありがとうございます。全話読みました！すごい、ドS主人公たまりません…！もっとドS見たいです！番外編の更新も楽しみにしてます！ (2017年3月20日 20時) (レス) id: 3417dbbffc (このIDを非表示/違反報告)
しーちゃん(プロフ) - 咲夜架さん» そんな細かいところまで見ていただいてありがとうございます！すいません！スペルミスですね…。すぐ修正させていただきます！ご指摘のコメント、感謝します(*^^*)番外編もよろしくおねがいします！ (2017年3月20日 19時) (レス) id: 2262265ad5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏色ポニテ
| 作成日時：2016年8月20日 8時
