【アイナナ】紡の兄は小鳥遊事務所に就職します (ページ8)

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八乙女楽２ページ8

～八乙女楽side～

仕事が終わり、真っ直ぐ家へと帰ろうかと思っていた直後、番組のスポンサー会社の社長に捕まり俺は逃げられず困り果てていた。

40代後半のご婦人で、匂いのキツイ香水を付けていて、どちらかと言うと俺は苦手なタイプの人だ。

なのに不本意にも俺が好まれているようで、今日もディナーの誘い。

「今日、私のオススメレストランでディナーなんていかが？」

「い、いや。夜も仕事がありますから」

「そんなこと言わずに～いいでしょぉ」

仕事だと嘘をついても、なかなか離れてくれる気配がない。

そんなご婦人に困り果てていたその時。

突然割り込んで来た男は、訳も分からない話を持ち出し、挙句の果てには俺の肩を組み馴れ馴れしく話しかけてきた。

あまりに突然の事で訳が分からないまま、気づけばご婦人は顔を赤くして立ち去っていく。

その姿を見送った男は、何事もなかったかのように俺の横を通り過ぎ真っ直ぐ自動販売機へと向かっていった。

「お、おい！待てよ！」

「え？俺ですか？」

「お前以外いないだろ」

ポケットから百円玉を出し珈琲を買い始める男。
そして、俺へと差し出してくる。

「は？」

「どうぞ」

訳が分からず、とりあえず珈琲を受け取ると、男はもう一本買い近くにあった椅子に腰掛ける。

俺も何となく、その隣へと座り珈琲を見つめる。
隣で平然と珈琲を飲む男は、俺よりも背が低いものの、整った顔立ちをしており、なかなかのイケメンだ。

何処所属のアイドルだろう？

ジッと横顔を見ていると、男は頭を掻きながらバツが悪そうに俺を見た。

「あの・・・俺の顔に何かついてます？それとも、さっきのこと怒ってます？」

「は？」

「いや・・・凄い眉間にシワ寄せて俺の事見ていたので・・・」

男は、自分の眉間に指をあててシワを寄せる。

「いや、驚いたけど別に怒ってはいない。と言うか、さっきは助かった。」

「怒ってないなら良かったです。八乙女さん飲まないんですか？それとも珈琲嫌いですか？」

「いや。そんなことない」

「なら遠慮なくどうぞ」

「あぁ」

男に促され俺は珈琲を一口飲む。

「お前名前は？」

「小鳥遊Aです」

「小鳥遊・・・」

何処かで聞いた覚えが・・・って！

「お前もしかして、小鳥遊事務所の社長と関係あったりするか？」

「関係あると言うか、社長は俺の親父ですよ？」

「ってことは、マネージャーは・・・」

「俺の妹です」