４１ song. ページ42
「おーそうか、よかったなあ」とまるで子供を褒めるみたいに頭を撫でる楽。
「まだ伸びるといいね」と優しく微笑む天。
二人の視線は、IDLiSH7の皆が向けてくれるものによく似ていると、心春は感じた。
「こ、心春ちゃん……今日は、ゲストに来てくれて、ありがとう」
「い、いえ！ こちらこそありがとうございます、十さん！」
二人の後ろでどこか緊張した面持ちで立っていた龍之介が、身を乗り出して感謝の言葉を伝える。
今日、心春がTRIGGERの冠番組にゲストとして招かれたのは、龍之介の紹介があったからだとお聞いていた。
「最近ドラマの役作りがうまくいかなかったり、収録で失敗しちゃったり落ち込むことが立て続けに起こったときに君の動画を見つけて……本当に、励まされたんだ。ずっと、お礼が言いたかった」
「十、さん……」
そういう龍之介の瞳は、少し揺れていた。
ありがとう。をたくさん伝えてくれる龍之介に、心春も目頭が熱くなってしまう。
「こいつ、森川にファンレター書こうとしてたくらいだからな」
「ちょ、ちょっと楽！」
「送り先がわからなくて落ち込んでたよね」
「天まで！」
恥ずかしいな……と頬を赤らめる龍之介に、嬉しい感情で胸中がいっぱいになる心春。
あの日学園祭に来ていた人へと向けた歌は、ネットを介し、画面越しにも受け取ってくれる人がいた。
これから心春が行う仕事は、それくらい凄いことなのだと、彼女は改めて実感する。
「今日はトークのあと一曲披露してもらう流れだからな。楽しみにしてるぜ」
「素敵な時間にしましょう」
「よろしくね、心春ちゃん！」
心強い三人の先輩の激励に、心春は真っ直ぐ見つめて「はい！ よろしくお願いします！」と気合の入れた返事をした。
▼ △ ▼ △
「こんばんは、TRIGGERの九条天です」
「八乙女楽だ」
「十龍之介です」
「今日のゲストはネットでも話題になっていて、龍のイチオシアーティストでもある方です」
森川心春さんです。どうぞ！
天のＭＣの後、心春は意を決して一歩足を踏み出す。たくさんのライトが照らされたスタジオ。ライブとは違う、非日常的な空間。ここが、芸能界。
「ほ、本日はお招きいただきまして誠にありがとうごじゃります！ 森川心春！ １７歳でし！」
「いや、緊張しすぎだろ」
楽の冷静なツッコミに、場がどっと沸いた。
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作者名：冬眞 | 作成日時：2021年7月3日 13時
