１０ song. ページ11
「心春っ、よくやったな！！」
「み、三月さんまで……」
「俺、俺、感動したよ、心春！」
「り、陸さん……」
「ちょーちょーちょーよかった！こはるんの歌！！」
「た、まき、く、重い……！」
万理に続くように三月や陸、環が乗っかってきて、心春は耐えられず地面に倒れ込んだ。
酸欠になる心春に気付いた紡や壮五、一織が上に乗っかる人たちを避けてくれて九死に一生を得た。
「大丈夫ですか、森川さん」
「た、助かりました、一織くん」
「でも、本当に心春ちゃんの歌は凄く良かったよ」
心春の横にしゃがんで、優しい微笑みをうかべる壮五に、大和もうん、うん、と同意するように頷いた。
「コハルの歌声を聴くと、心に春が訪れたように、優しい暖かさに包まれました」
「名は体を表す、てか？」
大和の言葉に、みんな「たしかに」と柔らかく笑う。
「きょう、歌えたのは、皆さんのおかげです」
姿勢を正し、皆の顔を見あげながらもそう伝える心春に、ピンと来てないのか一様に首を傾げた。
「皆さんに出会うまでは、ここに立つだけで怖くて、孤独でした。だけど、私はひとりじゃないって気づかせてくれて、寄り添ってくれたおかげで歌うことが出来たんです！」
本当に、ありがとうございます！
がばっと地面に額がつくくらい深く頭を下げて感謝を伝える心春。
きっとここで社長と出会わなければ、IDLiSH7の皆や紡、万理に出会わなければ、きっと彼女はあの頃から一歩も踏め出せないままだっただろう。
感謝しても、しきれない。
顔を上げれば、彼女の瞳には優しく笑ってくれる大切な人たちが映り、心春も自然と笑顔になれた。
「グループは違っても、俺たちは同じ事務所の仲間だよ！」
「一緒に頑張って行こうな、心春！」
「はいっ！」
陸と三月が伸ばしてくれた手を、心春は強く、強く、握り返した。
お母さん。
私には、一緒に支え合って、一緒に歌を楽しんでくれる人たちが出来ました。
お母さんが諦めてしまった夢を、私はこれから頑張って紡いでいくから。
そして、お母さんが大好きだった人に、きっと届けるから。
だから、どうかわたしを、見守っていてください。
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作者名：冬眞 | 作成日時：2021年7月3日 13時
