【INI】POP STAR【Hiromu.T】 (ページ21)

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「…もしかして、大夢と一緒?」

グラス片手に視線だけ向かいのソファーに向けた藤牧さんが、私に問う。
そこには、髙塚さんが良く使っているウエストポーチが転がっていた。

「そうですね」

「…へぇー、なるほどねぇ」

藤牧さんが私の顔を舐めるように見ながら、意味ありげに微笑む。
この人は本当に何を考えているのか分からなさすぎる。

とりあえず下手なことは言えないし、ボロが出るといけないので、早くどこかへ行って欲しい。

「…京介？」

「おぉー！大夢じゃんかー！」

そこへ、救世主髙塚様が現れた。
…いや、髙塚さんのせいでこうなってるから、むしろ疫病神なのか？

「そんで、2人は何?あ、ディズニーの話?」

「そうだけど…何?」

「いやぁ、別にぃ。二つ返事じゃなかったから気になっただけでぇ」

藤牧さんを不審者を見るような目で見つめる髙塚さんを見る。
仮にも、それは友人を見る瞳ではないと思います、髙塚さん。

それはそうと、いずれにせよ藤牧さんに怪しまれているようである。
ここは一つ、救済のために色々と言及した方がいいのかもしれない。

「あー、私のスケジュールが割と埋まってたんで、相談してたんですよね」

おそらく若干の引き攣り笑いにはなっていると思うけど、それとなく誤魔化せているだろうと思い、藤牧さんを見る。

「へぇー、これから休みも増えるし、そもそも広瀬ちゃんそんなにバイト突っ込んでないのに？」

あ、楓情報ね、これ。と、藤牧さんが小悪魔のような笑みと共に、その言葉を置き去りにする。

どうしよう髙塚さん、私は救済するどころか、墓穴掘ってるかもしれない。
恐る恐る髙塚さんの方を見ると、そこにはどこかげっそりとした人の姿があった。

ここで、私はなんとなく察した。
楓と藤牧さんが付き合っている限り、この仮交際の関係が終わることはないのだろうと。

「…夏休暇入ったばかりの平日は?」

「おっけー、楓と予定合わせとくわ。それじゃ、お幸せにねー」

髙塚さんの諦めと共にこの試合は、終わりを迎えた。
ため息とどこか重い雰囲気がこの場に流れる。

私は、味の薄くなったフロートを飲みながら、私もドリンクバーメニューにしておけばよかったと、見当違いのことを考えるのであった。