【INI】POP STAR【Hiromu.T】 (ページ14)

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体全体に、水族館の青い照明を浴びる。

どこかで、水族館に異性と共にいくのは、不仲のきっかけになると聞いたことがある。
それは、青い照明が、相手を不機嫌なように見せるからであるらしい。

「ここ、クラゲの大水槽が有名なんですよ」

お昼ご飯を食べたあと、髙塚さんが連れて行ってくれたのは、大きなクラゲの展示室。

巧妙な仕掛けも、映えるような展示の仕方もしていない。
でも、とても綺麗だった。
クラゲ自体も、その空間も。

ぷかぷかと浮遊するクラゲを見ると、切なくなる。
宙ぶらりんで、意義なんてなさそう。
生きる意味なんてなさそうなのに、生かされている。

「私みたい」

ふと口についた言葉が、つられて流れた涙が、髙塚さんに気づかれたかどうかすら分からないけど、私はなんとなくクラゲから目を離すことができなかった。

「今日はありがとうございました！急な誘いだったのに」

「いえいえ、こっちこそ自分だけで盛り上がっちゃって、申し訳ないです」

茜さす夕暮れ時の帰り道。
電車から降りた私たちはゆっくりと歩きながら、互いの帰路へと着こうとしていた。

昼間の私の言葉以来、口数が減ってしまった高塚さんは、私の隣を歩く。
やはり、何か傷つけてしまっただろうかと思ったけど、なんとなく触れないでおくことにした。

それよりも、髙塚さんが一応笑ったり喜んだりする人であることがわかって、何となく安心した。
もうきっと、どこかへ2人で行ったりすることはないけれど、最後の最後にこの人が少し見えて良かった。

…でも、ナンパ救出のお礼が水族館はやはり重かっただろうか。

「…さん、広瀬さん！」

「はっ、はい！」

私が考え事をしている間、ずっと私を呼び続けていたのか、髙塚さんは私の目の前で手をブンブン振っている。

そして、考え込むような素振りをして、何か思いついたかのように、私の顔を見ないままこう言った。

「俺は、広瀬さんのことよく知らないけど、つらいことは、つらいって言った方がいいと思います。」

今日は、丸い夕陽がたった今沈んでいって、東の空から月が昇っていく気配がした。
静かなのにどこか輝いているような景色が、ぼやけて見えた。

「え、広瀬さん!?ごめんなさい、なんか、出しゃばりすぎて…」

今、自覚した。
私は多分泣いている。