絶対エース病系短編集

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意味がわからない……

「どういうこと？」


「だから、僕はあの桜の木の魂さ。」


「……からかってるの？」

「からかってなんかないさ。
何故かは分からないけど、キミには僕が見えるそうだね。

普通の人には見えないよ。

見てて！」


そう言って彼は通りかかった人の前に立ち話しかける


しかし、その人は彼に見向きもせず立ち去った


「ほんとうなの……？」


「ね！だから言ったでしょ！」

いつの間にかこちらに移動してきた彼は嬉しそうに笑ってそう言った


ふと思い出した、今朝のお爺さんとの話

「キミはもう花を咲かせないの？」


大きく目を見開いた

「……咲かしたい……


けど、できないんだ。僕の残された力じゃ、もう蕾をつかせることが精一杯。


僕は……この木は長く生きすぎた

寿命を迎え、あとは枯れていく一方だろう……


色んなことがあったね……」

彼は木に手を当てて

反対の手を僕の額に乗せた

「今日から君の名前は“りょう”だよ。

私の庭で綺麗に咲きほこるその時を待ってますよ。」

「これは私からの贈り物です」

「美しい髪飾りだろう？」


これは……

この木の、彼の記憶……？


「熱いっ……助けて……」

火……？

「痛いよ辞めて……」

子供が枝を折る

「どうしてっ……！なんで咲かないの……！？」

「お願い……咲いてよっ！」


気がつくと……
頬を伝う涙

「見えた……？」

「キミは……りょうとこの木は長く生き、色んなことに共に立ち向かったんだね……」


「僕はある方に植えられ、愛情を貰って生まれた

その人の屋敷は全焼


その時の傷がこれ……」


袖をまくって、現れたのは包帯が巻かれた腕

包帯を取ると、焼け爛れたようなあと


痛々しくて目を背けた


「僕はね、沢山生きたよ。


そしてみんなから沢山の笑顔と愛情を貰った。



春になれば花を咲かせ、人々は一目見ようとやってきて、その下でお酒を交し、楽しむ。


そんな姿に僕は幸せを感じていたんだ。


でも、僕だって無限の命がある訳じゃない。


いつからか、蕾の付く枝が減って、

花がすぐに散る、花が咲かなくなって、


蕾もつかなくなった……


花を咲かせ続けるには、もっと強い力が必要になる……けど、その力はもちろん僕の生命力であって、僕にはもうそれは多く残ってないんだ……今年が最後かな……」


悲しそうな表情で夜空を見上げるその姿は

儚げで、とても美しいと思ってしまった。

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