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何で…何であの店に居たの
どうして…どうして私に声をかけたの
黙って出て行った私をどうして____あんな顔をして見たりしたの?
責められると思った。
そうされて当然だと思った。
どんな理由があったとしてもちゃんと話し合うべきだったんだ。
時間を経た今ならそう思えることもあの頃の私にはそれが出来なかった。
「_____会いたかった」
泣きそうな顔をしてそう呟いた彼を前に
どうしたらいいかわからなくなってしまった。
「少し…話せる?」
記憶とは違う彼に戸惑う。
優しくて穏やかで……でもこんな彼を私は知らないわけじゃない。
ただ記憶を辿る糸が少し長いだけ。
その場から逃げ出すことも謝ることも出来ない私を広臣は店の外へ連れ出した。
手を繋ぐでも腕を掴むわけでもなく、背中にそっと触れた彼の手。
遠慮がちなその手つきに貴方も同じなんだとわかって少しだけホッとする。
ドクドクと煩い心臓の音が伝わってしまわないかそれだけが心配だった。
「元気、だった?」
「……うん」
「そっか…」
時折髪をかく仕草をしている彼を見て懐かしさを覚えた。
知り合った後初めて二人で出掛けた帰り道
デートの別れ際貴方はよくそうしてたっけ。
その理由を後からになって教えてくれた。
心がじんわり温かくなって
心臓の音が緊張から違う音に変わり掛けたのに気づいてハッとした。
ダメ、このままじゃ…
「広臣……私、」
言いかけた私の唇をふいに彼の指が止める。
こんなキザなこと平気で出来る貴方が憎い。
折角決心した心をまたすぐに鈍らせる。
「頼むから……今だけ何も言わないで。
今日を___無かったことにしたくないんだ」
勝手なヒト。
さよならが言えなきゃここから立ち去ることも出来ない。
貴方から離れるにはその言葉しか私は知らないのに。
二人共何も言わないままただ時間だけが過ぎていく。それでももう帰らなきゃ…と足を踏み出した時、咄嗟に腕を掴まれた。
「また俺と____会ってもらえませんか?」
振り払うことが出来なかった。
少し力のこもった貴方の手が震えていたから。
一字一句違わない。その言葉を今言うなんて
やっぱり貴方はズルいヒト。
あの時もこんな時間だった。
月が綺麗で、貴方に掴まれた腕がすごく熱くて
今でもはっきりと覚えてる。
私達の時間が始まった瞬間だった。
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あいみか(プロフ) - さこさん» さこさん、今年もよろしくお願い致します〜(*´∇`*)臣くんが好きなゆえにどうしてもいつもストレートに結ばさせてあげられない私です(^-^;)次回判明の…予定(笑)ドキドキ楽しんで頂けるように頑張ります。さこさんいつも感謝ですv (2021年1月5日 13時) (レス) id: 01879ff23f (このIDを非表示/違反報告)
さこ(プロフ) - こんばんは!主人公が何者につけられてるのか気になるΣ(゚д゚lll)早く臣くんに連絡!!せーっかく二人がうまくいきそうなのに、水をさすのは誰!許せません( *`ω´) (2021年1月4日 21時) (レス) id: 8c0425346a (このIDを非表示/違反報告)
あいみか(プロフ) - さこさん» こんばんは.:*:・'°☆さこさんいつもありがとう(*´∀人)更新かなり開いてしまった上に一話のみで本当に申し訳ないです(・・;)感想頂けて本当に嬉しかったです。感謝です!次はなるべくもう少し早く…頑張りますφ(・д・。) (2020年12月30日 20時) (レス) id: 01879ff23f (このIDを非表示/違反報告)
さこ(プロフ) - こんにちは!臣くんよかったですね!主人公が一歩踏み出してくれて。また0からのスタートでも主人公に臣くんの気持ちが伝わって、振り向いてくれる事を祈ります!!次回も楽しみです(^^) (2020年12月30日 15時) (レス) id: 8c0425346a (このIDを非表示/違反報告)
あいみか(プロフ) - さこさん» さこさんいつもありがとう!ちょっと気になる所で終わしてみました(*´ω`*)自分でハードル上げちゃうと大変なのであんまり言えないけれど…楽しみにしてもらえると嬉しいです。 (2020年12月12日 11時) (レス) id: 01879ff23f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あいみか | 作成日時:2020年11月22日 14時