紡ぐ

紡ぐ19 ページ21

先程運ばれた患者さんをICUに届けた後

カテ室からAの順番を告げる電話があった。


「良かった…、間に合った…」

「白石先生、大丈夫ですか？」


雪村さんに心配されながらも3人でカテ室へ向かう。


『…、ありがとう、お姉ちゃん』

「怖くないよ。私がやるから」


検査台へAを誘導して右前腕にしていた

点滴の側管からドルミカムを入れて

酸素マスクに切り替える。


「A？…、始めましょう」


呼びかけに対してAの反応が

鈍くなったところで検査を始める。






「Aちゃん、目が覚めた？」


目を開けると冴島さんが

点滴を替えてくれているところだった。


『まだ、ぼんやりしてます…』

「よく頑張ったね。今、白石先生呼ぶわね」


そう言うと冴島さんは詰所へ戻っていった。

すると数分もしない内にお姉ちゃんがやって来た。


「どう？まだボーッとする？」

『うん…。どうだった？』

「…、PAHって分かる？」

『肺動脈性高血圧症…』

「そう。重症度はこれから調べるけど、

多分中等度だと思う」

『そっか…』

「今、Aに伝えるのは酷かな、って思ったけど

ちゃんと分かってるAに嘘は付けない。

本当なら循環器に転科させるんだけど、

ここで、私がAの主治医をやる。どうかな？」

『…、ここにいていいの？』

「うん。私がいてほしいの」

『ありがとう』

お姉ちゃんの言葉に涙が溢れそうになる。

でも、ここで泣いたらお姉ちゃんが辛くなる。

私は涙を堪えるのに必死だった。

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