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いつもと同じ調子で語るセレン。この状況では、その"普通"が"異常"に映る。
「……何がしたいわけ? おにーさん。逃げないんじゃなかったの?」
 予想をしていなかった行動に眉をひそめ、本意を探ろうとじっと見る。視界の端では、結界を何とかしようと、隊員達が奮闘している。
「逃げないよ。ただ、マイカを説得しないといけないから」
 ボクの嫌いないつもの笑みでセレンはそう返した。すると、自分の名前が出てきたのに気付いたのかアイツが会話に入ってきた。
「ん? んー? セレン、誰と話してるの?」
 アイツがセレンに体を寄りかからせて、ニコニコと訊く。そこで初めてボク達に気付いた。ボクとアイツの目が合う。その瞬間、アイツから表情が消え去った。
「……誰?」
「もう忘れたんだ」
 どうりで、セレンがあの部屋から出ている事に関して、さっきみたいに殺気立ってないわけだ。忘れてたら、怒る事も出来ない。……まぁ、アイツのは怒るってレベルを超えてるけど。
「……マイカさん」
 後ろから平坦な声が聞こえてきた。ずっと黙りこんでいたアイのものだ。視線をそちらに移せば、真っ直ぐにアイツを睨みつけるアイがいた。
「……」
 憎しみのこもった、底冷えた瞳。その目は、"魔女"のものと良く似ていた。
 アイツがアイに目を向ける。
「……あなた……」
 ふらりと、アイツがセレンから離れる。
 空気が更に張りつめた。
「やっと、会えた……」
 そして。
あなたが(・・・・)"魔女(・・)"! 殺してやる!!」
 アイツが内包していた感情が一気に爆発した。ビリビリと空気を揺さぶる声に、外にいる屈強な隊員達でさえ動きを止めた。
 しかし、アイは揺るがなかった。
「それはあたなの方でしょ!! ずっと、ずっと、セレンを苦しめてきた"魔女"は!」
 ついにその言葉を言う。……かつて、ボクの姉が放った言葉と同じ台詞。
『マイカ、あなたが"魔女"なのよ!』
 フラッシュバックする光景。でも、あの時とは違う。アイツと対峙している人物と、そして、アイツの態度が。姉の時は、混乱の末に破壊行動に出た感じだったけど、今回は相手に明らかな憎悪と殺意を抱いている。
 ……あぁ、こんな時に冷静になっている自分が嫌になるね。全く2人を止めようという気が起きない。……このまま、アイがマイカを殺してくれないかな、なんてそんな事を願っている。ボクも大概、頭がおかしいよね。

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/  
作成日時:2016年4月26日 0時

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