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〜132〜 ページ35

「う、ぁっ……」
 いきなり地面に投げ出された。石畳の上だ。
 体の感覚が戻っている。平衡感覚もある。先程まで暗闇にいたというのに、光が眼に痛くない。でも、異常に体に力が入らなかった。
 雨が降っていた。熱が奪われていくのが分かる。石畳も冷えていて、余計体温が下がるようだった。
「……」
 驚くほど冷静だった。周囲の状況が良く見える。
 私はゆっくり、ゆっくりと、体を持ち上げた。
「セレン」
 私はセレンに会わなければならない。
 視線が集まっているのが分かる。ざわざわとした話し声が聞こえる。うるさいなぁ……。睨みつければ、引き攣った声をあげて、私を避けていく。
 倒れていた所の傍の建物に寄りかかりながら、体を引きずるようにして進む。その時、雷が光った。その瞬間、寄りかかっていたガラスに私の顔が映った。
「!」
 醜い顔だった。誰かが私の顔のパーツを、目を瞑ったまま、付け替えたような顔だった。
「なん、で……」
 ダメだ、ダメだ、こんなんじゃセレンに会えない……。こんな顔をセレンに見せるわけにはいかない……。
「あ、あぁ、き、れいな、顔。綺麗な、顔を、つくらな、きゃ」
 私は知っている、身体の造形を変化させる方法を。『肉体改造魔法』だ。どこで知ったかは覚えていないけれど。

『その魔法は使わない方が良いよ』

 記憶の奥から、誰かの声が聞こえた気がした。その声に、一瞬動きを止め……振り払った。
 イメージする。元の顔は思い出せなかった。でも、代わりに世にも美しい顔が頭に浮かんできた。あぁ、こんな端整な顔立ちだったら、セレンの隣に立っても、恥ずかしくないし、"魔女"だって、諦めてくれるかもしれない。

 ぐにゃり、と視界が歪んだ。

「あ、う、あ"ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 全身が引き裂かれるような痛みが襲った。実際に血も流れている。顔に傷をつけちゃいけないという私の意思が通ったのか、顔に傷ができた様子がない事が幸いだった。

 ビィィィィィィィィィィィィィィィィッッ!!

 警報が鳴り響いた。それが何を意味するか、よく思い出せなかった。ただ「これで治安部隊が来るぞ」「あの危険な女を何とかしてくれるはずだ」という会話が聞こえた。ここにいては危ないかもしれない。

 痛みは続く。叫びは噛み殺した。必死に足を動かして、歩く。
 セレンはどこ?
 そうだ、森にいるかもしれない。
「セレン、待っててね」

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/  
作成日時:2016年4月26日 0時

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