〜104〜 ページ7
「……ここにいたんだ」
日が傾いてきた時、アスラ君が普段よりも険しい表情でやってきた。
「どうしたんだい?」
「治安部隊がボク達の事を掴んだよ。ここに来るのも時間の問題かな」
「!」
覚悟はしていたけれど……ついに、来るんだ。
緊張する私に対して、セレンは冷静そのもので、
「流石だね。僕達が何も細工をしていなかったとはいえ、もう特定するなんて。昔に比べて、最近の治安組織は優秀だよ」
危機感がないともとれるセレンの言葉に、アスラ君は益々不機嫌になった。
「何、余裕ぶってんの、おにーさん。逃げないの?」
「逃げないよ」
きっぱりとセレンは断言する。
「あぁ、でも安心して。アイとアスラの逃げ道くらいは用意するよ……それとも、ここで僕を殺していくかい? アスラ」
いつもと同じ調子でそんな台詞を吐くものだから、流しかけてしまった。
「どういう事、セレン? 一緒に逃げようよ。死ぬ気なの?」
「そもそもおにーさんは死ねないでしょ」
私とアスラ君の同時に放たれた別々の言葉をセレンは見事に聞き取ったようで、柔和な笑みのままで答える。
「そうだね、僕は死ぬ気だし、死ねるよ」
「!」
「……」
私が思考停止に陥った一瞬。
ピンポーン、と不吉な音がした。本日2度目のチャイム音。……言わずもがな、治安部隊だ。扉が壊されているというのに、律儀にチャイムを鳴らしてくれたらしい。そして、野太い声が響く。
「治安部隊だ! これより強制捜査を行う!」
それを聞いた途端、反射的は私は言っていた。
「セレンがここに残るって言うんなら、私も逃げないよ! ここに残る!」
「……ボクは、おにーさんとアイツが死んだと確認するまでは死ねない。逃げたら、それが分からないでしょ」
依然として不機嫌そうだが、その言葉は裏返せばアスラ君もここに残るという事だ。
私とアスラ君の強固な態度に流石のセレンも苦笑して、
「それは君達の自由だから……僕は何も言わないよ」
・・・
私達が1階へ下りるのと、その破壊音がするのは同時だった。
ドゴォォオッ
凄まじい音を立てて、何かの破片が飛び散る。音は玄関からだった。
急いでそちらへ向かうと、原型を留めていない玄関に、数人の死体、それを上回る数の隊員、そして、無表情の"魔女"……。既視感を覚えた。ほんの数時間前にもこんな光景を見たような気がする。
17人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/
作成日時:2016年4月26日 0時