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「ん?」
 流石に戸惑ってしまって、首を傾げる。「どうして?」と理由を問うと、照れたように頬を赤くした。
「セレンがちゃんといるって、生きてるって確かめたいから……ダメかな……?」
 こういう時はどう対応するのが正しいのだろう。母なら、ここで安心させるために抱きしめるだろうか。
「わかった」
 僕がそう頷くと、彼女は満面の笑みを浮かべて、バッと抱き着いてきた。それはもう、体当たりに近いくらいの勢いで。支えきれず、僕は彼女とともに床に倒れてしまった。彼女は、それでもお構いなしに、加減の知らない強さで僕を抱きしめる。
 これは、抱きしめ返した方が良いんだろうか。
 そっと、彼女の背中に手を回す。すると彼女はもっと力を込めてきて、耳元で囁いた。

「大好き、セレン」

 あぁ、なんて、純粋で、真っ直ぐな想い。およそ、人間には抱えきれなさそうな熱量だ。
 それを注ぎ込まれるものだから、風邪なんて引いてないはずなのに、熱に浮かされたような感覚になる。
「君は、」
 昨日は酷く冷たかったのに、すっかり常人よりも高くなった体温の、傷があった箇所に包帯が巻かれた体を抱き締めながら、彼女の鮮烈な感情に揺さぶられた心のままに問う。
「……君の名前は何?」


・・・


 思えば、あの時からだったのかもしれない。烈火のような彼女の想いに焼かれて、惹かれて、……好きになってしまったのかもしれない。
 出会った日の事を思い出して、自分の顔に淡く笑みが浮かんだのが分かった。
 あの時、彼女は自分の名前を覚えていなくて、僕の問いに答える事は出来なかったけれど……、今の彼女なら、僕と、何よりアスラの名前を口にした彼女なら、あの日の質問に答える事が出来るかもしれない。

 治安部隊が恐れの表情と共に武器を向けている事を気にせず、寝起きのふらふらとした足取りで僕達の元へ来た彼女に、尋ねる。
「君の名前は何?」
「忘れちゃったの? セレン」
 そう言って、きょとん、とした顔で首をかしげた後、彼女は答えた。

「私はアイだよ。アイ・ハルハーネス」


・・・

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/  
作成日時:2016年4月26日 0時

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