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その後、決勝まで勝ち進んだ先輩のチームは、PK戦にまで突入する大接戦を繰り広げた結果、惜しくも敗れてしまった。
録画した試合を家族で見ながら、私達兄妹は号泣してしまった。
だって、グラウンドに踞って、あのテグン先輩が泣いていたから。
週明けの学校で、約十年振りに準優勝という輝かしい結果を残したサッカー部が全校集会で表彰されている姿を見て、また泣いて……
私の大好きな人の高校サッカーが幕を閉じた。
それは同時に、私の中でもテグン先輩を近くで応援するという、ある意味生き甲斐の終わりを迎えた事を意味する。
まるで抜け殻になったような心を、無理矢理新たな目標で埋めて、先輩のいなくなったグラウンドから目を背けていたら、あっという間に卒業の季節になってしまった。
三年生と二年生では校舎も違うから、会いにでも行かない限り先輩と顔を合わせる事も無くなって……。
久し振りに見たのは、卒業式の前日。
誰もいないと思って横切ったグラウンドで、一人サッカーゴールを見つめて佇んでいる先輩の後ろ姿だった。
「ぁ……」
声をかけようとして、止めた。
広い背中が、その日は一段と猫背になっていて、寂しそうに見えた。
涙が込み上げて、唇を噛んで視線を落とす。
この気持ちが消える日が来るんだろうか……
小学校四年生の時に恋をして、今まで、先輩が頭の中から居なくなった事など一度も無かった。
明日の卒業式で、本当にもう、これでお別れ。
心が壊れてしまいそうで、それ以上その姿を見ていられなくなって、走って門の外へ逃げた。
明後日からの春休み中に、美術館の館長の計らいで、フランスのアーティストのアトリエに見学に行かせてもらえることになっていた。
帰ったら途中だった荷造りをしなくちゃいけない。
立ち止まってしまったらもう前に進めなくなってしまいそうで、無理矢理でもそう理由をつけて、泣きながら帰り道を行こうとすると、
「Aちゃん！……Aっ！」
後ろから追い掛けてくる足音と声に、反射的に振り返った。
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作者名：サラン | 作成日時：2016年2月28日 14時
