21 ｳｫﾝｼｸside ページ22
久し振りにAが泣いたのを見た。
久し振りって、本当に久し振りの小学校の時以来位の久し振り。
Aがフラれていつも泣きつくのはハギョニヒョンだから、正直嬉しかったし、どうしても何とかしてやりたいと思った。
『あの子の気持ちが分かるから』
泣き疲れてプツリと糸が切れたように眠る前、ボソッとそんな事を言っていた。
チョン・テグンの名前を出した途端だったから、きっと先輩絡みに違いない。
Aを宥めるので精一杯で、誰にやられたのか聞き出せなかったが、俺は絶対、Aにこんな傷を負わせた奴を許さない。
俺は取り敢えず自分の学校へ行き、放課後、直ぐにチャリを飛ばしてAの学校へ行った。
もう既に目星は付いている。
犯人は絶対チョン・テグン先輩の事を好きな女。
だからあの人の周りを見張っていれば分かる筈。
俺はいつもAが座っていた、木が生い茂っている方のベンチで目を凝らして、サッカー部が部活を始める様子を見ていた。
マネージャーが三人もいるのか？
あとは、見学者が五人位で、その中で女子は二人。
「お、来た来た」
そこへ、ユニフォームを着たチョン・テグンが来て、俺の方をジッと見てからウォーミングアップを始めた。
他の選手も、俺をチラチラ気にしているが、そんなことどうでもいい。
Aを傷付けた奴を調べ上げるまで、俺はここから動かないと決めて、鋭い視線を送り続けた。
そして翌日も。
Aは熱は下がったが、学校は休むことにして、また俺は放課後同じ場所へ来ていた。
マネージャーが来て、荷物を運んでいるのを見ていると、まだパーカーを羽織ったままのチョン・テグンが現れて、何故かグラウンドじゃなくて、俺のいる方へ歩いてくる。
「……おい、お前、Aさんの弟だろ？」
「え？」
すげぇ驚いた。
何故なら俺と同じ位のデカイ背丈で、肩幅なんて同じ男としても惚れ惚れするほど広くてガッチリしている、威圧感を纏った彼の声は、耳を疑う程細くて小さい。
それに、
「僕の事、ご存じなんですか？」
コクン、と只頷くだけの仕草が……
可愛いなおい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サラン | 作成日時：2016年2月28日 14時
