好きすぎてごめんなさい (ページ20)

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浮いたり、沈んだり……

最近は特にそんなことばかりで、自分の中の『恋』が形を変えてきている事に気付き始めた。

見ているだけで幸せだった頃の私は、こんな風に先輩の仕草一つで不安になったり、誰かに疎まれたりすることも無かった。

私を見下ろす、先輩の表情の変化にも気付かなかった。
話す時の眼差しや、照れた時の癖も。

サッカーをしている時の先輩しか知らなかった私の世界が、突然沢山の知らなかった彼で溢れ出す。

思い描いていたのと違う先輩。
想像していた通りの先輩。

翻弄されて、また好きになって……

『恋』は好きという気持ち一つの想いで出来ていると思っていた。
でも、実際は複雑でややこしい。

自分の好きな人と距離が近付けば、私と同じように彼を好きな人が傷付くということ。
それでも好きでい続ける事が出来るのか……

ほんの少しだけ、自信が無くなった帰り道を、一人ひたすら考えながら歩いた。

『着いたの？』

夜、先輩からの嬉しい筈の電話に複雑な気持ちで出ると、変わらない優しい声が聞こえて涙が出そうになった。

「……はい」

『……どうしたの？』

「い、いえ……ごめんなさい、今日も……連絡……」

『え？あ、あぁ……いや……』

「……先輩……」

『…………なに？』

「あ、いえ。部活、頑張ってください」

『……うん……』

「じゃあ……」

『うん』

……私は何を、言おうとしたんだろう……？

ケータイを置いて、もう何も考えたくなくなって、またベッドに小さく丸まった。

……欲張りになったんだ。

先輩とほんの少し、距離が近付いただけで……。

薄暗いベンチで、グラウンドで輝く彼と目が合ったかもしれないと思うだけで、宝物を貰ったように幸せだった。

なのに今は、先輩の仕草や眼差しや言葉一つに何かを期待して、勝手にショックを受けたり、自分でも気付かないうちにマネージャーの子に嫉妬だってしていた。

「…好きなだけだった時より……苦しい……」

布団を被って、声を殺して泣いて、
泣き疲れて……

またそのまま眠ってしまった。