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帰ると直ぐに、まず、今まで無かった前髪を作った。
そうすれば一応、傷は完全に隠すことは出来る。
別に私自身は顔に傷があっても気にはならないけど、家には私以上に私を気にしてくれる人が三人もいる。
父と、ハギョンお兄ちゃんと、シガだ。
中でもこういう時、一番反応するのがシガだから、絶対に迎えに来てもらうわけにはいかなかった。
自分でぶつけたと言っても彼には通用しない。
普段優しいけど、誰かにやられた傷だと知ったら……あのマネージャーの子はきっと恐ろしい目に合わされる……。
憎い相手だけど、シガを犯罪者にはしたくないから、治るまではこうして絶対にバレないようにしておかないと。
前髪を切って、先輩の番号が書かれたメモを眺めながら部屋で何となく落ち着かない時間を過ごしていると、机に置いてあったケータイがピカピカ光って着信音が鳴った。
「えっ！？」
画面を見て硬直。
それから一人でアワアワして……
「も、もしもし？」
意を決してようやく出ると、
『もしもし？』
電話越しで、小さく聞こえる彼の声に、心臓がドキッと跳ねた。
「はい！」
『家、着いたの？』
「え？あ、はい」
『……連絡、無いから……』
ハッとして、
「ぁ、ごめんなさい……」
今更後悔する。
気にしてくれて、連絡先まで教えてくれたのに……。
先輩を呆れさせてしまったのでは無いかと、途端に不安になった。
でも、
『ん、無事に帰れたなら良かった。
……それだけ』
電話越しの声音は変わらず柔らかくて、怒っている風でも無いように感じた。
「ありがとうございます、わざわざ……」
『いや、俺も、手当てしてもらったから。じゃあ、まだ部活中だから……』
「あ、はい。ありがとうございました。頑張ってください」
『うん、じゃあね』
「はい、じゃあ……」
一瞬の出来事に、また思考が追い付かない。
ケータイを握りしめたまま、ベッドにフラフラと崩れて、幸せを噛み締めて一人で悶絶していたら、いつの間にか眠ってしまって、結局その日はシガ達と顔を合わせる事は無く終わった。
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作者名：サラン | 作成日時：2016年2月28日 14時
