さよなら ページ23
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荷造りは簡単で、この国と私の関係性を表しているような気がして寂しかった。
呆気ない。
エン君達が開いてくれた送別会にも、お兄ちゃんは来なかった。
韓国に帰国してから会ってなくて、たぶんもう……。
これでいいんだ。
もう何度、この言葉を頭の中で繰り返してるんだろう?
結局苦しめてしまった。
また、あの時と同じように。
いや、あの時よりもっと。
帰る前に、最後にもう一度だけ……
タクシーを捕まえて、空港ではなくどうしても行っておきたい場所を告げた。
私達の始まりの場所へ。
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そこは韓国に来た時と変わらなくて、私の知ってる場所のようで、もう知らない場所。
当たり前か。
住んでたのは十数年も前だし、前来たのはたった半年前だもんな。
此処から全てが始まったから、此処で全て気持ちの整理をつけたかった。
私達の生まれ育った昔の家で。
『Aー!お兄ちゃん今から学校行ってくるからね?急いで帰ってくるから待っててね?』
小学校に行く前、必ずそれを言いに来てから登校して行って、
『Aただいま!良い子にしてた?』
帰って来ると自分の家に鞄も置かず、私の家に帰って来てた。
『お土産があるよ!ほら』
帰り道に私へのお土産の野花や綺麗な小石を集めて。
「凄く…好きだったな……」
思い出してたら思わず溢れた本音に、自分で苦笑いしながら視界が滲んだ。
違う。今も好き……大好き
こんなに好きな人にはきっと、この先ずっと出会えない。
大人になったお兄ちゃんは、凄く格好よくなっていて、
背も凄く高くて、スタイリッシュで、
相変わらず優しくて、
横暴で傍若無人だけど思いやりがあって、
いきなりいろんな所に引きずり込んだり、
突然現れて私をビックリさせて、
繊細だけどガサツで、
無自覚執着男で、
相変わらず好きな事には一生懸命で、
こっちが心配になる位努力する人で、
人として尊敬できて、
気遣いができる人で、
それから私を……
精一杯大切にしてくれた。
精一杯愛してくれた。
心が悲鳴を上げてる。
「さよなら……」
小さな声で呟いて、その場を離れた。
思い出もこのままここに置いていけたらいいのに……。
気持ちを整理するつもりだったのに思ったようには上手くいかなくて、
思い出に背を向けてもう一度タクシーに乗り込んだ。
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けぃたん(プロフ) - 続き読みたいです (2020年12月16日 8時) (レス) id: f3a839ab97 (このIDを非表示/違反報告)
みんはは(プロフ) - お忙しいことでしょうが更新を楽しみにしております(^^) (2018年10月30日 17時) (レス) id: 2600b841f9 (このIDを非表示/違反報告)
サラン(プロフ) - みんははさん» さらんさんがんばります(*´▽`*) (2018年9月14日 0時) (レス) id: a36c8f7d95 (このIDを非表示/違反報告)
みんはは(プロフ) - 更新ありがとうございます。主人公ちゃんついに決心しましたね(^^)主人公ちゃんもレオくんもサランさんも←がんばって! (2018年9月13日 23時) (レス) id: 2600b841f9 (このIDを非表示/違反報告)
サラン(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、まぁまぁ落ち着いて(ノ^∇^)ノ取り敢えずLEOさんの体でも眺めてもう少しお待ちを 笑 (2018年9月7日 0時) (レス) id: a36c8f7d95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラン | 作成日時:2018年6月6日 22時