僕の彼女シリーズ 6

僕と彼女の手 1 ページ33

.



「テグナの手、大きいね」


一日一回は触れる手。


Aの手はいつも温かい。


僕より少しだけ肉付きが良くて、柔らかくて、爪も昔から伸びてるのを見たこと無い位短く切り揃えられていて清潔感がある。


左手の小指に、凄く細めのピンクゴールドの、無駄な飾りの無いシンプルなリング。

でも嵌めている時と、嵌めていない時がある。

只単に、外したのを忘れて何処かに置きっぱなしにしていたりする時があるから。


それを着け始めてもうすぐ一年になる。

去年僕がクリスマスにプレゼントした物だ。


別に欲しいと言っていた訳じゃなかったけど、当時僕が小指にリングをよく嵌めていて、Aにもどうかと思って勝手に買ってプレゼントしたら、欲しい物でも無かったのに凄く喜んでくれて、それから毎日着けてくれている。


普段から飾りっ気の無い彼女を、こんな風に僕の選んだ物で彩るのが好きだ。

Aは僕があげた物は、何でも大事にしてくれるから尚更。



今年はブレスレットはどうだろう……


ボーッと彼女を観察しながら考えるのはそんな事。



風呂上がりの、寝るまでの穏やかな時間。


僕の手に凄く良い香りのハンドクリームを塗ってくれて、軽くマッサージしながら自分の手と重ねたりしてる。



多分、Aは僕の手が好き。


こうしてソファーで隣に座っていると、気付けば僕の片手は彼女の方に引き寄せられていて、ずっと触れてる。


特に指を交差させて繋ぐのが好きで、それが一番ピッタリ手のフィット感を感じられて、
実は僕も好き。





「貸して？Aも塗ってあげる」


「ありがとう」


差し出された彼女の左手の小指のリングを抜いてテーブルに置き、今度は交代。



彼女の手は、インドア生活の割には細かい傷が多い。


「……ここ、やっぱり痕残っちゃったね」


「うん」


チワワに噛まれた痕と、火傷やら包丁の切り傷やら……


「……傷だらけ」


同じハンドクリームを塗りながら言うと、


「うん。……汚い？」


ちょっと気にしちゃったみたいで引っ込めようとするから、またギュッと握り直した。


「そんな事無いよ。この方が好き。
Aの性格と歴史を感じる」


「歴史…………なんか壮大だね」


複雑そうに、それでも安心したみたいに笑った。


.

2→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す