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映画が終わってしまうと、今度はひたすら寂しくなる。
借りたブランケットを畳みながら、
「……帰らなきゃね……」
口から漏れた名残惜しさ。
こんな事出来ただけでも幸せなのに、欲張ってしまいそうになる。
もっと、このままデートしていたいって。
普通の恋人同士のように、手を繋いで、街を歩いて……
なんて。
出来っこないのに、無い物ねだり。
私達には私達の、幸せの形がある。
家で二人きりで、只一緒の時間を過ごせるだけで……
それだけで十分過ぎる位幸せで、それが、彼が私を世間から守る為の最善なんだって事も、ちゃんと理解してるから。
「……よし、行こ?」
席から立ち上がって空になったトレイを持って行こうとすると、まだ座ったままのテグンが私の手を取ってグッと引っ張った。
「まだ終わりじゃないんだけど」
「……え?」
訳が分からなくて立ち止まる。
「……高校の、サッカー部で同じクラスだったやつがバーやってるんだって。
そこ、個室予約してもらったから」
「……え?でも、実家、帰らないといけないんじゃ……」
「遅くなるし、ちょっと飲むから、近くのホテルに泊まるって……言ってきた」
「…………え……」
テグンがお尻のポケットを探って、カードキーを目の前にかざす。
「実はもう、チェックインはしてきたんだ」
「え……」
さっきから『え』しか言えてない私。
だって、テグンがそんな事するなんて思ってもみなかったから。
「…………だめ?」
「え?」
「帰りたい?」
座ったまま見上げてくる、少し不安そうだけど、凄く格好いい私の恋人。
……ダメなわけない。
首を振って、
「………帰りたくない」
やっとそう返すと、凄く嬉しそうに笑った。
もうダメ。
心臓壊れそう……
なにコレ……
やっと立ち上がった彼が、滑らかな指で私の頬を撫でて、私の手からトレイを奪って行く。
出口に向かう階段で私を振り返って片手を差し出す姿が、もう王子様にしか見えなくて……
また、彼に恋をした。
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ERI(プロフ) - サランさん» 是非!宜しく御願いします (2016年10月10日 14時) (レス) id: 50277497f7 (このIDを非表示/違反報告)
サラン(プロフ) - ERIさん» ERIさんありがとうございます(>_<)そう言って頂けると、凄く嬉しくて励みになります!今後とも宜しくお願いします(*^^*) (2016年10月9日 22時) (レス) id: 6dcd7388fb (このIDを非表示/違反報告)
ERI(プロフ) - サランさん» お返事ありがとうございます!新しいの見ました!凄く面白いです!また次の更新期待してます! (2016年10月9日 15時) (レス) id: 50277497f7 (このIDを非表示/違反報告)
サラン(プロフ) - pubuさん» pubuさん、ありがとうございます!読んで頂き、更にコメントまで頂けて、恐悦至極です(>_<)これからも頑張るので、宜しくお願いします! (2016年10月9日 8時) (レス) id: 6dcd7388fb (このIDを非表示/違反報告)
pubu - 初めまして^ ^実は密かに拝見させていただいてました> <僕の彼女シリーズが大好きでいつも更新楽しみにしています♪これからも更新頑張ってください!応援してます! (2016年10月9日 0時) (レス) id: c5f36204de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラン | 作成日時:2016年8月31日 0時