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あれから約十年、本当に大事に使ってくれていて、贈った僕が色褪せていることにも気付かなかった。
結局、それから高校を卒業して、この傘で相合い傘をしたのは一回か二回程度。
……そうか……十年振りなんだ……
改めてその事に気付いたら、なんとなく緊張してきた。
その時、雨水を跳ねながら目の前の道路脇にゆっくりとバスが停まった。
プシュー
ドアが開いて、数人サラリーマンが降りてきて、ビニール傘をさしてそれぞれの方向へ歩いていく。
一番最後にAが出て来て、停留所の屋根の下に駆け込んだ。
バスが出発して行くのを見届けて、水溜まりを避けて彼女の元へ行くと、Aが僕を見て驚いた様に目を丸くした。
「テグナ！？なんで！？」
「迎えに来た」
そう言って花柄の傘を揺らすと、Aがそれを見て花が咲いたように笑った。
「この傘、だいぶ古くなったね」
あの頃よりもくっついて、あの頃よりもゆっくり帰り道を歩く僕ら。
「そうかな？」
「新しいの買おうか？」
僕を見上げてくるAの距離も、あの頃よりも近い。
首を振ると、昔とは違った、僕の香水の香りを含んだAの香りが鼻を擽る。
「ううん、これが好きなの。壊れても直してずっと使うよ」
雨のせいで少し肌寒いのに、そんな彼女の言葉に胸が温かくなる。
「テグナ、ありがとう」
あの頃と違って、もう遠慮もせずに僕の腕にすり寄ってくる彼女が本当に愛しい。
青春のときめきは過ぎ去ってしまったけど、『愛』という形に変化して、この胸をときめかせてくれる今の僕達の時間。
「僕の方が、ありがとうだよ」
「何で？」
「何でって……これも大事にしてくれてるし……いろいろ。あ、水溜まり」
Aを抱えるように足元の水溜まりを避けて歩く。
「テグナ、濡れちゃうよ」
僕の肩を気にして傘をこっちに傾けようとするA。
「大丈夫。じゃあもっとこうしてて」
彼女がくっついていた腕でその肩を引き寄せて、傘を持っていた手を持ち変えてもっと身を寄せると、彼女に覆い被さるように更に距離が近くなる。
Aの小ささは変わらないままで、でもあの頃よりも、もっと愛しいと思う気持ちが強くて……
僕を見上げてきた彼女の唇にキスをした。
「……見られちゃうよ…」
Aが顔を赤くして視線をさ迷わせてからまた僕を見る。
「大丈夫、こうしてるから……」
今度は少し傾けた傘の中で、もう一度キスをした。
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サラン(プロフ) - なっつみーさん» なっつみーさんありがとうございます！(*^^*)感想いただけるととても励みになります！きゅんきゅんしてもらえてありがたいです〜(>_<)これからも頑張りますね！ (2016年6月4日 7時) (
レス) id: 6dcd7388fb (このIDを非表示/違反報告)
なっつみー(プロフ) - いつも更新を楽しみにしています。朝からきゅんきゅんです！これからも頑張ってください！ (2016年6月4日 6時) (レス) id: 3fffeea110 (このIDを非表示/違反報告)
サラン(プロフ) - hanaさん» hanaさん、ありがとうございます(*^^*)感想頂けて嬉しいです！励みになります(>_<)これからも妄想の端くれを拙い文章で表現出来るように頑張りますね！ (2016年5月23日 13時) (レス) id: 6dcd7388fb (このIDを非表示/違反報告)
hana(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ほっこりカップルで癒されます！ほんと女の子は分からないな〜て、思いつつも好きが止まらない感じ、妄想しまくっちゃいます。笑これからも楽しみにしてます！ (2016年5月22日 16時) (レス) id: de9204c906 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラン | 作成日時：2016年4月27日 0時
