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暫く走ると、車が入り組んだ路地の路肩に停車した。
「ここ?」
「うん、そうみたい」
僕も初めてだから分からないけど、聞いていたように、店舗の裏の、アパートへ入っていくみたいな入口があるから、たぶん合っている。
人通りも殆ど無い。
「ちょっと待ってて?」
一応、先に降りて入口を開けてみると、出る前に予約しておいたからか、エプロンを着けた店員が直ぐに来た。
Aに目で合図を送ると、彼女も車を降りて小走りで入ってきて、なんとなくホッと一息。
なんせ僕の職業のせいで二人で外食することなんて一度も無かったから。
通された個室に二人きりになって、顔を見合わせたら気が抜けて笑ってしまった。
二人掛けのテーブルにキャンドルと、小振りな花。
少し薄暗いルームランプがムードを演出していて、慣れていないから緊張する。
取り敢えず、こういう時は……
「ぁ、ありがとう」
Aが座る椅子を引いてエスコートもどきをしてみるけど、彼女も僕も照れてしまって、向かい合って座ってもキョロキョロして装飾が気になるフリをしてみたり……。
「……何にしようか?」
「うん……オススメ何だろう?」
「何でも美味しいって聞いたけど……。
何種類か頼んで一緒に食べる?」
「うん」
オシャレな店へ来ても、結局いつも通りの食べ方を選択してしまう僕ら。
店員を呼んで、オーダーしてからまたメニューを開きながら、二人でデザートは何にしようか悩んだりしていたら、やっと緊張が解れてきた。
本当はホンビナとの事が凄く気になるけど、ここで聞いてしまうとせっかく明るくなったAの笑顔が消えてしまうだろうから、必死で別の話題を探す。
お陰でどうでもいいことばかり話す今日の僕はやたら饒舌。
でも、Aがニコニコしているからそれでいい。
料理が運ばれてきて、あまりの美味しさにほんの少しだけワインが飲みたくなって、グラス一杯だけオーダーして、二人でそれをチビチビ飲んで、僕は、
ご機嫌で幸せそうなAを見ているだけで、こんなに幸せなんだ……
って、改めて感じた。
誕生日も、クリスマスも、外で祝ったことがなくて、いつも家に籠って済ませていたけど、これからはこうして外で二人で食事をするのもいいかもしれない。
勿論厳重な警戒は必要だけど、Aが本当に嬉しそうだから、そんな労力も苦にはならないだろう。
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サラン(プロフ) - なっつみーさん» なっつみーさんありがとうございます!(*^^*)感想いただけるととても励みになります!きゅんきゅんしてもらえてありがたいです〜(>_<)これからも頑張りますね! (2016年6月4日 7時) (レス) id: 6dcd7388fb (このIDを非表示/違反報告)
なっつみー(プロフ) - いつも更新を楽しみにしています。朝からきゅんきゅんです!これからも頑張ってください! (2016年6月4日 6時) (レス) id: 3fffeea110 (このIDを非表示/違反報告)
サラン(プロフ) - hanaさん» hanaさん、ありがとうございます(*^^*)感想頂けて嬉しいです!励みになります(>_<)これからも妄想の端くれを拙い文章で表現出来るように頑張りますね! (2016年5月23日 13時) (レス) id: 6dcd7388fb (このIDを非表示/違反報告)
hana(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ほっこりカップルで癒されます!ほんと女の子は分からないな〜て、思いつつも好きが止まらない感じ、妄想しまくっちゃいます。笑これからも楽しみにしてます! (2016年5月22日 16時) (レス) id: de9204c906 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラン | 作成日時:2016年4月27日 0時