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紫「よろしくね！Aちゃん！」
打ち合わせ終わりに視線が交わってしまった私達。
逸らそうとしさけど、彼がトコトコこっちに
歩いてくるものだから、逸らすに逸らせなくて。
私の心をがっちり掴んで離さない。
ニコニコそういう彼が、何故か一瞬悪魔の
ように思えた。
「よろしく、平野くん！」
私の精一杯の力を振り絞って出した声は
なんとも言えない間抜けな声。
緊張とか、嬉しさとか、そういう彼に対する
いろんな感情が混み合って渋滞状態。
そんな私を彼はクスッと笑って、
紫「紫耀、でいいよ」
ピシャリと交わった視線が熱い。
口を開けばそんな甘い言葉。
それは、単なる社交辞令じゃない。
きっと、私の中にも彼に対する'' 望ましさ ''
が、確かに存在するから。
こんなにも人を魅了してしまう彼は、きっと
どうかしてる。
何をしたらこんな人間が生まれてくるのか。
…………いや、もはや人間じゃない？
紫「えっ？無反応……？笑」
そんな呑気なことを考えていると、ほら。
私の目を覗き込んでくる彼。
その表情が眩しくて、また、私は君のトリコに
なった。
「じゃあ、紫耀、くん。でいい？」
いきなり呼び捨てはちょっと。
だって、まだドラマの話は打ち合わせ。
これから、どんどん発展していく。
そんな甘い思考を持った私はどこまでもバカ。
紫「ふはっ、いいよ！じゃあ、俺は呼び捨てでいい？」
何故そんな呼び捨てにしたがるのか、
その理由を知るのはもっともっと先。
「うん。全然構わない！」
'' 構わない '' なんて、少し大人の言葉を使って
みたけどそれとなく溢れ出してくる恥ずかしさ。
対して年齢も変わらないのに。
紫「じゃあね、A！また連絡する！」
手をひらひら振って私の名前を呼ぶ彼は、
やっぱり一枚上手。
あの子を一体、これまで何人もの人を魅了
してきたんだろう。
もっと彼を知りたい。
そう思うのに、時間は要さなかった。
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作者名：憂流。 | 作成日時：2023年4月9日 14時
