Step5 ページ6
「忘れ物、無いわね？」
「うん、大丈夫。ちゃんと昨日、確認したし」
玄関先で、私はお母さんにそう言った。それからお父さんの車の荷台に荷物を運び込む。
新しい季節、4月。向かいの家の桜の木は、既に満開だった。
この景色とも、少しお別れだな。ふとそんなことを思い、ダンボールをその場に下ろして、木を見上げた。
去年の今頃は、家族三人でお花見したっけ。といっても、定番のお花見スポットは混んでいたから、家の窓から向かいの家の桜の木を眺めながら、少しご馳走を食べたくらいだったけど。
今年も、もっと引越しの準備を早くしておけば、そんな余裕はあったかもなぁ。
全ての荷物を運び終わり、真新しいピカピカの制服に袖を通した。
ポケットには、可愛いデザインの学生証が入っている。
「家の前で写真、撮る？」
腕時計を見ながら、お母さんが訊いた。私が頷くと、お父さんは「それじゃあ、カメラ持ってこないと」と言って、家の階段を駆け上がっていった。
この日が、アイディールスクールの入学式だった。
どうにか試験に受かり、入学手続きを済ませ、アイカツフォンや制服を購入し……と日が経つごとに、アイドルになる準備が整っていって、ちょっとドキドキしていたあの頃が、最早懐かしい。
親元を離れることも、それを助長しているのかも。
まだ少し寒い空気を、すうっと吸った。春の匂いがする玄関先。気持ちを整える。
お父さんが慌ててカメラを持って降りてくる。「撮るぞー」という声に、自慢の笑顔で応える。
一眼レフがシャッターを切った。
そうしてまたすぐにお父さんは家の中に引っ込み、そしてまたドタバタと家から出てきた。
手には、さっきの写真が握られていた。
「離れていても、これを見て、父さんと母さんのことを思い出すんだぞ！」
「やだ、もう。お父さんったら。今生の別れってわけでもないのに……」
いつもと変わらないお父さんとお母さんのやりとりに、思わず頬が緩む。
「無理にとは言わないけど、一年に数回でいいから、顔を見せてね」
「うん。ちゃんと会いに行くから、安心して」
「千叶のことなんだ！ 心配しないでもすぐ、テレビで顔を見るようになるさ！ ハッハッハ……」
「お父さんは親バカすぎるよ！」
賑やかな朝。まるで、いつもの日常のような……。
だけど、もう、時間だ。
「それじゃあ、千叶」
「——行こっか」
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吹雪朱雪(プロフ) - 銀木犀さん» ですね！ (2022年3月12日 22時) (
レス) id: a6664ce86f (このIDを非表示/違反報告)
銀木犀 - 吹雪朱雪さん» ありがとうございます‼︎ 私も高校受験だったので吹雪朱雪さんとは同い年ですね…！お互い春休み自由を謳歌しましょう‼︎ (2022年3月12日 22時) (レス) id: 25f4b581e3 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪朱雪(プロフ) - おめでとうございます！受験ってことは、高校か大学ですかな？僕は高校を合格したので、もしかしたら同い年かも… (2022年3月12日 21時) (レス) @page36 id: a6664ce86f (このIDを非表示/違反報告)
銀木犀 - ななふしさん» ｳﾜｰｰｰｯｯ応援ありがとうございます‼︎ こんな時間に占ツク見てる時点で勉強してないのバレバレですがいただいたコメント見てやる気が出ました…！受験が終わったらめちゃめちゃ更新するのでもうしばらくお待ちください…‼︎ (2022年2月27日 0時) (レス) @page36 id: cb1096e7b3 (このIDを非表示/違反報告)
ななふし - どうか勉強のほど頑張ってください…‼︎また更新されるのを楽しみにしています‼︎ (2022年2月23日 16時) (レス) @page36 id: 1a1d3d8eb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀木犀 | 作成日時：2019年11月10日 13時
