Step29 ページ30
最終審査を1週間後に控えたある日。
夕食を食べ終わり、寮へと向かう途中の中庭を歩いていると、どこからか歌声が聞こえてきた。
歌声に吸い寄せられるように足が動く。だんだんとはっきりしてきたその歌は、件のオーディションの課題のパートだ。とすると、もしかして……。
暗がりの中、中庭に設けられたガゼボで、台本を手に持ちながら演技をする人影。見覚えのある綺麗なロングヘアは、やっぱり、つむぎちゃんだ。
つむぎちゃん！ と声をかけようとして、思い止まる。演技の邪魔をしちゃ悪いし……けれど、その場にいて、もう少しつむぎちゃんの演技を見ていたい。絶妙な背徳感があるけど、植え込みの影からそっと見つめることにした。
それにしても、ますます不思議なのが、この前のつむぎちゃんの様子だ。
何かに怯えるように、ずっとびくびくしていたあの様子と、今の様子はまるで違う。堂々としていて、どんなプレッシャーをも跳ね除けてしまいそうな気迫がある。単にギャップ、というだけなのか、それとも——。
「ひゃっ」
つむぎちゃんの短い悲鳴が聞こえて、はっと我にかえる。いつのまにか練習を終えていたらしいつむぎちゃんが、じっとこちらを見ている。不信感に溢れた視線が痛い。
「あっ、ごめんね、別にそんなつもりじゃなくって、えっと……！」
弁明も兼ねて、私も同じガゼボの中に入りベンチに腰掛けて、つむぎちゃんに事情を話した。
「なるほど、
微笑むつむぎちゃんの様子は、以前よりはいくらか落ち着いているように見えた。
「ねえ、あの、訊いてもいい？」
そう前置きして、私はずっと疑問に思っていたことを伝えた。
つむぎちゃんは少し目を伏せながら、理由を訥々と話し始める。
「私は多分、自分に自信がないのだと思います」
「自信が？ そんなに歌も演技も上手いのに」
「そう言っていただけると嬉しいのですが……。私は、父母の反対を押し切って、ここを受験したのです」
つむぎちゃんは、有名な企業、華上グループの社長の一人娘であり、いずれはそこを継ぐように言われていたのだと言う。
両親の猛反対を押し切った時に飲んだ条件が、「半年以内に成果が出なければアイドルを辞める」ことだったのだ。
「演技をしていると、プレッシャーを忘れられる気がするのです。違う自分になれるような……」
そう呟いたつむぎちゃんの表情は、どこか切なげだった。
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吹雪朱雪(プロフ) - 銀木犀さん» ですね！ (2022年3月12日 22時) (
レス) id: a6664ce86f (このIDを非表示/違反報告)
銀木犀 - 吹雪朱雪さん» ありがとうございます‼︎ 私も高校受験だったので吹雪朱雪さんとは同い年ですね…！お互い春休み自由を謳歌しましょう‼︎ (2022年3月12日 22時) (レス) id: 25f4b581e3 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪朱雪(プロフ) - おめでとうございます！受験ってことは、高校か大学ですかな？僕は高校を合格したので、もしかしたら同い年かも… (2022年3月12日 21時) (レス) @page36 id: a6664ce86f (このIDを非表示/違反報告)
銀木犀 - ななふしさん» ｳﾜｰｰｰｯｯ応援ありがとうございます‼︎ こんな時間に占ツク見てる時点で勉強してないのバレバレですがいただいたコメント見てやる気が出ました…！受験が終わったらめちゃめちゃ更新するのでもうしばらくお待ちください…‼︎ (2022年2月27日 0時) (レス) @page36 id: cb1096e7b3 (このIDを非表示/違反報告)
ななふし - どうか勉強のほど頑張ってください…‼︎また更新されるのを楽しみにしています‼︎ (2022年2月23日 16時) (レス) @page36 id: 1a1d3d8eb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀木犀 | 作成日時：2019年11月10日 13時
