【BTS】たくさんの愛を紡いで

ずるい男×ホソク ページ27

.




お腹の底に響く重低音。ノリのいい音楽。薄暗い部屋の中にちかちかする証明。香水やらタバコの煙やらが混ざり合う空間。そこに男女が入り乱れている。

いつものように誘われてクラブに来たのはいいけれど、わたしを誘った男は好き勝手に行動していて。わたしも適当に誘いに乗ったりすることもあるけれど、なんだか今日はそんな気にはなれず。

だったら来なきゃいいのに、少しでも彼と一緒に居たいから。気乗りしないことでも楽しんでるって顔して横にいる。

でも今は1人だから。顔は死んでるし、話しかけられても明るい声なんてでない。1人、壁に凭れかかってタバコをふかす。

人間観察なんてしててもみんな同じようなことしてるから楽しくもないけど、ぼーっと見ては溜息をつく。

何してるんだろう、わたし。彼も戻ってくる気配はないし、もう帰ってしまおうか。これだけ帰ってこないってことは、きっと、相手を見つけてよろしくやってるのだろうし。

そう思って吸っていたタバコを近くの灰皿に押し付けていたら、腕を引かれた。



「やっべー襲われるかと思った」

「は？」



わたしの腕を引いたのはずっと待っていた人で。わたしの気持ちなんて知らずに「怖い」とか「やばい」とか連発してる。



「なに、どうしたの？」

「いやーさ、結構好みの子がいたから。声掛けてきたし応じてたの」



楽しそうに話す内容にあーやっぱり聞きたくないって思う。好みの子ってなに。どんな子よ。わたしと何が違うの。なんて見苦しい気持ちがぐるぐるする。



「そのまま外出るって言うからついて行ったら突然キスされて。しかもシャツのボタン外し始めるからびっくり」



びっくり、じゃないわよ。よく見たら唇にはグロスがついてて。その好みの子のが移ったんだって思うと、なんとも言えない感情が渦巻く。




.

…→←…

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す