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241.時は薬と ページ41

それからしばらく月日が流れた。


 時というのは不思議で

 
 人を少しずつ前へと向かせてくれる。


 冷たく凍れるような冬を越えて、


 季節は春になった。


「雄之介さん、この花ください。」


「はいよ〜!」


 花屋の雄之介さんは手際良く花を束ねた。


「Aさん、この花は誰かにあげるの?」


 店の奥からやってきた弥栄子さんが私に問う。


「はい。今日は杏寿郎さんの誕生日なので、

 これからお墓参りに行こうと思って!」


「そうなんだね。だから誕生花のアヤメの花なんだね!」


 私は雄之介さんから花束を受け取り、

 弥栄子さんに見送られて店の外へ出た。


「…あ!」


「どうしたの?」


「弥栄子さん、手を出してください。」


「ん?なあに?」


 私はお守りを取り出すと、

 紐の部分を掴んで弥栄子さんの手のひらにそっと置いた。
 

「弥栄子さんにあげます。」


「お守り?」


「はい。…今よりさらに幸せになれるお守りです!」


「そんな、悪いよ。これはAさんが…」


「弥栄子さんに持っていて欲しいのです!」


 弥栄子さんは眉を下げて笑い、

 ありがとうと言って、大切に懐へしまった。


 私は御礼を言って店を後にした。



 墓地に着いて、手桶に水を入れて歩き始める。

 
 すると、突然私の手から手桶が離れた。


「待ちますよ。」


「千寿郎くん。」


 秋よりも背が伸びた千寿郎くんが軽々と手桶を持つ。


「なんだかどんどんお兄さんになってしまうね。」


 千寿郎くんは眉を上げて驚いた。


「そうでしょうか。

 僕は変わらず、お二人の味方ですから。」


「ふふっ。」


「あ、父上!」


 杏寿郎さんのお墓の前には、槇寿郎さんが立っていた。


「遅い!!」


「ええ!?お約束の時間は過ぎていませんよ?

 槇寿郎さんが早くにお家を出られたからでしょう?」


「そうですよ!

 僕は間に合うように余裕をもって家を出て

 お供えを買いに行ったのですから!」


「ふんっ!知らん!」


 私と千寿郎くんは顔を合わせて笑った。




 杏寿郎さん、お誕生日おめでとうございます。


 そちらの世界はどうですか?


 私たちは前を向いて生きています。


 槇寿郎さんもだいぶ明るくなりました。


 お酒もほどほどにしていますよ。


 千寿郎くんも自分の進む道を見つけたようです。




 私は今も変わらず、




 あなたを愛しています。



 


 

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - sayaさん» sayaさん、ご感想をありがとうございます!一気読み嬉しいです〜!勿体無いお言葉まで…感謝の気持ちでいっぱいです。。ぜひ、他の作品でもお待ちしておりますね!最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 (10月20日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
saya(プロフ) - はじめまして!キュンキュンしたり、切なくなったり、ホワホワしたり、で一気読みしてしまいました。とまりませんでした。このお話と出会えてよかったです。他の作品もこれから読まさせて頂きます!! (10月19日 23時) (レス) id: 7154e48ffe (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - もにょさん» もにょさん、最後までお読みいただき、そしてコメントをしてくださり、ありがとうございます!最高な作品だなんて…幸甚の至りです!またいつでもお越しくださいね。 (2023年5月6日 8時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
もにょ - ハンカチがびっしゃびしゃになる程泣きました。甘く切なく幸せな夢をありがとうございました。最高な作品に出会えて幸せです。長編お疲れ様でした! (2023年5月6日 4時) (レス) @page48 id: c62f6d1e54 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 桜月夜さん» 桜月夜さん、感想ありがとうございます!感動してくださるなんて光栄です!素敵なお言葉までありがとうございます(*˙˘˙*) (2021年11月19日 17時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年11月5日 19時

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