君が思い出すまで5【煉獄杏寿郎】

236.お館様からの文 ページ36

あなたとの別れを惜しむように


　空は涙を流しています。


　煙となったあなたは


　きっと、どこへでも行けるでしょう。


　母、瑠火さんには会えたでしょうか。


　千寿郎くんを、槇寿郎さんを、見守っていてね。



　杏寿郎さんが亡くなってからというもの、


　今日の葬式まではとにかく忙して、


　慌ただしい日々を送っていた。


　
　葬式が終わり、ひと段落ついた時のこと。


　要は私のところに文を持って来た。


「お館様カラダ」


　私は要から文を受け取る。


「…お館様から？」


　おもむろに文を読んでみた。


　"Aさんへ


　はじめまして。突然の文、すまないね。

　私は、鬼殺隊最高責任者の産屋敷当主、

　産屋敷耀哉という者です。
　

　あなたに直接渡したいものがあります。

　明日、時間のある時に産屋敷家へおいでください。


　本来であれば、私の方から赴きたいのだが、

　目が悪く、身体も強くないので、

　失礼ながらお越しいただきたい。

　よろしくね。


　産屋敷耀哉"




「オレガ、明日案内スル。」


「要が案内してくれるなら安心だね。

　じゃあ、明日、朝餉を終えたら行こうか。」


　要は私の手に擦り寄った。





　翌日、私は要の案内のもと、

　お館様のお屋敷にお邪魔していた。

　立派なお屋敷だ…。

　広くて迷子になりそう。


「Aさん、よく来てくれたね。」


　二人のよく似た子どもに手を預けながら来たその人は、


　優しく人を惹きつけるような声をしていて


　この人がお館様だとすぐに分かった。


「いえ、お手紙ありがとうございました。

　私は煉獄家でお世話になっています、

　AAといいます。」


　お館様は優しく微笑む。


「私は産屋敷耀哉、君のことは杏寿郎から聞いているよ。」


　杏寿郎さんから…？


「文を。」


　お館様がそう言うと、隣にいた白髪の女の子が


　私に文を渡してくれた。


「…これは？」



「それは杏寿郎からだよ。


　無限列車への任務に向かう前に預かったものだ。」



　任務に行く前に…？


「鬼殺隊の子供たちは皆、遺書を書いている。

　杏寿郎からも預かっているが、これは君宛のものだよ。」



「…ここで読んでもよろしいでしょうか？」



「もちろん、構わないよ。」



　私は自分の手の中にある


　文をゆっくりと開いて読み出した。

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