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219.それは罠 ページ19

「赤く染まって照れているみたい。」


「君の頬のようだな。」


「え!?赤いですか?」


 私は慌てて顔を手で覆う。


 山々は色づきはじめ、少し前まで青かった紅葉は


 綺麗に赤に染まった。


 杏寿郎さんが久しぶりの非番というとことで

 
 以前二人で桜を見た高台で秋めく街並みを眺めていた。



「耳まで赤いな!」



 私は恥ずかしくなって俯く。



「耳まで染まる君も可愛い。」



「…もう分かりましたから。それ以上は…。」


 杏寿郎さんは顔を覆っていた私の手を取ると


「もっと顔を見せて。」


 と、柔らかく笑った。



「どんな顔も愛おしい。」


 照れ臭くて、私は思わず歩みを進めた。


「ほら、あちらの方の紅葉が綺麗です!


 杏寿郎さん、行きましょう!」



「うむ!」



 開けた場所に出ると、そこは紅葉して落ちた葉が


 絨毯のようにあたり一面に広がっていた。



「わ〜!!すごいですね!」


「本当だな!綺麗だ!」


 杏寿郎さんはそう言うと私の手を引いて歩き出し、


 途中で止まったかと思うと、いきなり寝転んだ。


「ふふっ。」



 私もつられて寝転んでみる。



 空はとても高く、


 青の中に魚の鱗のような雲が広がっている。



 その視界には乾いた風に揺すられて落ちていく


 赤や黄がいくつも映っていた。



 ふと、右隣に顔を向けると、


 瞳を閉じた杏寿郎さんの横顔が見えた。


 ひらひらと落ちた葉が


 杏寿郎さんの左目の瞼に落ちる。



 身体を起こして、そっと右手でその葉を取るが、


 なおも杏寿郎さんは瞳を閉じたままだ。



 …え?寝てしまった??



 私はあたりを見回す。



 誰もいないことを確認すると、




 彼の唇に一度だけ私の唇を重ねた。





 ゆっくりと離れると、杏寿郎さんは薄く目を開ける。





「…前に私に隙があると言いましたが、


 隙があるのは…杏寿郎さんもですよ。」



 杏寿郎さんは私の頬を両手で優しくつまんだ。



「A、残念ながらそれは違うぞ?」





「え?」





「隙ではない。


 君は俺の罠にかかったのだ。」





 杏寿郎さんはそう言うと、





 私の顔を引き寄せて口づけをした。
 




 

 秋の絨毯の上



 私の隣には愛する人。








 風に乗せられて落ちた紅葉は


 水面に揺られどこへと進んでいくのでしょうか。
 
 


 

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - sayaさん» sayaさん、ご感想をありがとうございます!一気読み嬉しいです〜!勿体無いお言葉まで…感謝の気持ちでいっぱいです。。ぜひ、他の作品でもお待ちしておりますね!最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 (10月20日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
saya(プロフ) - はじめまして!キュンキュンしたり、切なくなったり、ホワホワしたり、で一気読みしてしまいました。とまりませんでした。このお話と出会えてよかったです。他の作品もこれから読まさせて頂きます!! (10月19日 23時) (レス) id: 7154e48ffe (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - もにょさん» もにょさん、最後までお読みいただき、そしてコメントをしてくださり、ありがとうございます!最高な作品だなんて…幸甚の至りです!またいつでもお越しくださいね。 (2023年5月6日 8時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
もにょ - ハンカチがびっしゃびしゃになる程泣きました。甘く切なく幸せな夢をありがとうございました。最高な作品に出会えて幸せです。長編お疲れ様でした! (2023年5月6日 4時) (レス) @page48 id: c62f6d1e54 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 桜月夜さん» 桜月夜さん、感想ありがとうございます!感動してくださるなんて光栄です!素敵なお言葉までありがとうございます(*˙˘˙*) (2021年11月19日 17時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年11月5日 19時

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